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サンマが「大衆魚」に戻る日は…海水温上昇で不漁の予報も、大型船の解禁早め出だし好調

読売新聞 / 2024年9月13日 12時0分

港に水揚げされたサンマ(8月16日、北海道根室市の花咲港で)=石原健治撮影

 秋の味覚サンマの季節がやってきた。今年は沖合の公海への漁を早めた結果、8月の水揚げ量は前年同月の4倍超と好調の船出となった。しかし、専門機関の予報によると、今年も昨年並みに不漁という。海水温の上昇で近海に来遊するサンマは依然少なく、安くておいしい「大衆魚」が食卓に戻る日は遠いままだ。

 今年のサンマ漁は8月10日に解禁された。漁業情報サービスセンターによると、8月の全国の水揚げ量は北海道を中心に2611トンに上り、前年同月(574トン)の4・5倍だった。北海道根室市の漁師 飯作鶴幸 はんさくつるゆきさん(81)は「去年のこの時期は本当に少なかったのでうれしい」と喜んだ。

 好調の出だしとなったのは、大型船の解禁を10日ほど早めたためだ。昨年まで、航行・漁獲能力の小さい順(小型→中型→大型)に解禁してきたが、近年は日本近海まで来るサンマが減少。そこで全国さんま棒受網漁業協同組合は今年、「初の試み」として、より沖合の公海まで行ける大型船の解禁を早め、小型、中型船と同時に一斉解禁した。

 8月は、公海内の漁場が例年より西寄り(道東沖800~900キロ前後)に形成されたのも功を奏し、同組合の大石浩平専務理事は「船が港と漁場を往復する日数が短くなり、水揚げ回数も増えた」と話す。

 だが、見通しは明るくない。国立研究開発法人「水産研究・教育機構」の今年の長期予報では、日本近海に来るサンマの資源量は92万トンと、昨年(94万トン)並みに低水準という。

 漁業情報サービスセンターが9日に発表した中短期予報でも、道東近海には今月中~下旬も来遊せず、10月に来たとしても少ないという。10月下旬には三陸沖にも南下するが、断続的で少ないとしている。同センターの担当者は「全国に流通するサンマも昨年並みに少ないだろう」と話す。

 近海での不漁は、海水温の上昇が大きな要因だ。水産庁によると、地球温暖化の影響で親潮(寒流)が弱まった結果、近海の海水温が上昇し、冷水を好むサンマが来なくなったという。国内の漁獲量は2008年の約35万トンをピークに減少し、22年は1万8000トンで過去最低となった。

専門家「漁獲枠の大幅な削減検討を」

 今年はいち早く公海へ打って出たが、漁獲量回復の道のりは遠い。

 プランクトンなどのエサが豊富な近海まで回遊してくるサンマは150~160グラム台に成長するが、沖合の公海はエサが少なく、80~110グラム台と小ぶりなものしか取れない。

 北太平洋の資源量も、サンマが食文化として定着しつつある中国や台湾などの漁船の進出や、海洋環境の変化により減少しているとされる。日本や中国、台湾、ロシアなど9か国・地域が加盟する北太平洋漁業委員会は4月、資源回復のため、今年の海域全体の漁獲枠を22・5万トンに制限した。

 だが、日本を含む6か国・地域の漁獲量は近年10万トン前後と漁獲枠を大きく下回っており、規制が十分とは言えない状況だ。東京海洋大の勝川俊雄准教授(水産資源学)は「資源量の減少を食い止めるには、漁獲枠の大幅な削減を検討すべきだ」と指摘する。

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