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「中高級機種とプロ向けカメラが好調」「レッド社買収、動画市場に挑戦」…ニコン・徳成旨亮社長

読売新聞 / 2024年9月13日 16時47分

ニコンの徳成社長(東京都品川区で)=武藤要撮影

 スマートフォンの普及により、市場の縮小が見込まれたデジタルカメラの業績が好調だ。ニコンは今後1000億円を投じて、生産拠点の見直しを進める。金融機関出身の徳成旨亮社長に話を聞いた。(聞き手・橋谷信吾)

スマホと共存できる時代に

 ――カメラ・映像事業が中国で好調だ。

 「かつては営業赤字の事業だった。当時は、競合もカメラ事業を売却していた。スマートフォンの機能が進化する中で、デジタルカメラはどうなるのだろうかと言われていた。

 今は、スマホとデジカメが共存できる時代になった。デジカメの世界での販売台数はピークの20分の1まで減った。でも、国内各社の事業は好調だ。上位5社が世界シェア(市場占有率)のほとんどを取っている。日本の産業では珍しい例だ。

 何が起きているか。私の理解では、写真を撮るという行為がスマホの普及で広がった。フィルムカメラの時代は現像が必要だったが、デジカメは不要だ。今はすぐにネットで公開できるし、インスタグラムやフェイスブックといったSNSもある。スマホが裾野を広げてくれたのだと思う。その結果、カメラのピラミッドでは上の方にある当社の高級機が売れている。

 当社は、2020年代に中高級機種とプロ向け、ミラーレスに絞ったことが、想定以上にうまくいった。典型が中国市場だ。富裕層がスマホではなく、カメラをということで売れている。カメラが一番売れているのは米国。次が欧州で中国、アジアだったのが、最近は中国が欧州を追い抜いた。

 インドも伸びている。人口も多いが、ウェディング向け需要が大きい。インドでは結婚式を何日か続けて開いて、何度も衣装も替える。中国とはまた違うマーケティングが必要になる。ウェディングのプロカメラマンにカメラを貸し出したり、使ってもらったり。ドローンにカメラを積んだりも想定する。各国でどのように、当社のカメラが使われているかを考えながらセールス活動をしている」

 ――カメラが見直されているのはなぜか。

 「コロナの時に、在宅で何もすることがないという時は、米国も含めて世界で撮影方法に対する関心があった。ライティングの当て方について説明したコンテンツは多く読まれた。

 英語でシャッターのことをシューティングというが、一瞬を切り取る、獲物を仕留めるという意味もある。自分が撮るというのは人間の本能的なものなのではないか。望遠を使ったり、決定的な場面をおさえたりというのはなかなかスマホではできない。(ミラーレスの)Z6Ⅲでは、プリキャプチャー機能があって、1秒前や、ちょっと遅れたかなと思っても撮れていたりする。1秒に何百枚も撮ることができれば、鳥が飛び立つ瞬間が写ったりする。

 シューティングを公開する喜びをスマホが教えてくれて、母集団が広がった。そうしたこともあって、コンパクトデジカメやレンズが交換できないタイプに比べて、レンズ交換式は他社も含めて好調だ」

 ――生産拠点の見直しを進めている。

 「生産能力向上が目的だ。精度の高いレンズを作る。1000億円を投じて、30年までに順次、工場を新しくしていく。まずは栃木。多くのレンズはタイで作っており、性能が高いものは栃木で生産している。顕微鏡の対物レンズや半導体の露光装置に使う何メートルもあるような大きなものまで。質を上げたい。

 カメラも半導体も、どんどん精密になってレベルが上がっていく。ごみや毛のようなものまで見えるようになってしまう。もちろん(工場の)老朽化対策もあるが、精度を上げていくのが目的だ。レンズ周りに関連するところにも投資をしていく。半導体の露光では、世界最先端の技術が求められるからだ」

映画大国インドで売り込み

 ――プロ向けの動画カメラ市場に力を入れている。

 「米国のカメラメーカー、レッド社を買収した。映画の撮影でも、Zマウントが期待されている。当社が持つチャネルを使って、映画大国のインドで売り込みたい。レッドは動画を圧縮する特許を持っている。

 この分野は、間違いなく市場拡大が期待できる。米国のハリウッドが映画を撮影するだけではなく、ユーチューバーも動画を撮る。楽しさに目覚めて、セミプロ、ハイアマチュアと言える人たちが増えてきた。

 かねて動画の市場には挑戦したいと思ってきた。日本では保守的だとみられているニコンが、ハリウッドではとがっているレッドを買収した。レッドに技術者を派遣し、本気でやっている。

 今の当社のカメラでも、動画は十分撮れるが、色みを始め、ハリウッド映画の繊細さはまったく違う。最終的にどんな姿になるかはわからないが、飽き足らない人の要望に応えたい。お客様の声を聞きながら、一歩、半歩前を行きたい」

◆徳成旨亮氏(とくなり・むねあき) 1982年慶大法卒、三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行。三菱UFJフィナンシャル・グループでは取締役専務執行役などを務める。2020年ニコン入社。代表取締役兼副社長を経て、24年4月に社長。福岡県出身。小学校の頃に始めたフルートが趣味。

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