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出産したプロサッカー選手・岩清水梓、引退がよぎっても現役を続けたわけ…仲間から「おめでとう」「頑張ってね」

読売新聞 / 2024年9月17日 10時0分

収録の合間に談笑する岩清水選手

 女子プロサッカー・WEリーグの日テレ・東京ヴェルディベレーザに所属する岩清水梓選手が、読売新聞ポッドキャスト「ピッチサイド 日本サッカーここだけの話」に登場。妊娠・出産を経験して、今も現役アスリートとして戦い続けている岩清水さんの現在地を語った。

アスリートの妊娠・出産

 岩清水さんは2020年に男の子を出産。現役を続けながら妊娠・出産を経験した女子サッカー選手は、国内ではまだ少ないのが現状だ。

 「(妊娠・出産に関する)情報のなさが大変でした。アメリカのリーグだと何人かいるんですよ。チームに1人とか。けがをしたときの(リハビリ)プログラムのようにはならなかった」と振り返る。

 調べて見つかる情報は一般的なことばかりで、アスリートとして知りたい情報はほとんどなかったという。「何をしたらいいんだろうって。(リハビリ用の)プログラムを思い出しながら『合ってるのかな?』と思いながら」

 妊娠が分かってからはチーム練習から離れた。「つわりがなかったから少し走ってた時もあったんですけど。でも、妊娠が分かってからは対人プレーは怖くなってくるし、チームに迷惑かけるのも違うなと思って離れた」

 妊娠には個人差があることを踏まえつつ、必要以上に体を動かすことを抑制していたと振り返る。

 「重たいものを持たないとかになると、加重をかけたらいけない、スクワットもできないって思っていたけど、アメリカの人たちとかアスリートの方々はやってた。出産するための体力維持は一般女性も必要で、ある程度の体力は必要だったと考えると、本当はやれた」

 「最終的にお腹がめっちゃ大きくなってソファーに座ったままになる。それを考えたら妊娠の初期は動けるし、お腹も邪魔じゃないからいろいろできたはずだった」

現役を続ける意義

 妊娠が分かったときの周囲の反応は?

 「最初は引退を考えていた。(今月に日本代表コーチの退任を発表した)宮本ともみさんはママさんプレーヤーとして代表合宿に行ってた。お母さんにその話をしてたから、『あなたもそうなったらいいんじゃない?』みたいなことを言ってくれて。チャレンジしてみようって」

 クラブに妊娠を伝えたときに、復帰の意思も伝えた。仲間たちからは「おめでとう」という言葉とともに、「頑張ってね」という言葉もかけられた。

 今では、結婚した後も現役を続ける国内リーグの選手は増えているが、当時はまだ、女子サッカー選手が子どもを産んで現役を続けることはもちろん、結婚後に現役を続ける選手も少なかった。

 岩清水さんが出産を経験して現役を続けることで、WEリーグの選手たちのロールモデルにもなりそうだ。「現役続行を選択したとき、私が宮本さんを見て思ったように、(現役を続ける)選択肢をつくりたかった。だから、私はあきらめちゃいけないんだなと思うようになった」

 WEリーグは「Women Empowerment League」の略称で、国内に女子プロサッカー選手という職業が確立され、みんな(WE)が主人公として活躍する社会を目指すという理念が込められている。

 また、WEリーグ設立の意義には、日本の女性活躍社会をリードし、女性プロスポーツを根付かせるなどのメッセージもうたわれている。

出産から2年後

 岩清水さんがチームの練習に合流したのは出産から約10か月後。その後はけがもあり、公式戦のピッチに戻れた頃には2021年11月になっていた。

 「けがとは違って出産は体の変化は大きかった。一般人の体に戻るところから始まるから脂肪もつくし、骨盤周りとかの体幹もなくなる。体重もなかなか落ちないのに、筋肉はつけなきゃいけない。それまでは考えたこともなかった食事のとり方も見直した」

 岩清水さんは当時をこう表現する。

 「ブヨブヨよ(笑)。初めてジョギングしたときなんてさ、『1周も無理』みたいな」

 子どもと一緒に入場してピッチに立ちたい。モチベーションになったのは家族の存在だ。

 スタメン復帰は出産から2年後の2022年3月。夢がかなった瞬間は?

 「絶対泣くなって思ってたけど、泣かなかった。入場しているときに『夢、叶ったんだ』っていう感動はあったけど、スタメンの重圧が上回っちゃった」

 「(入場後は整列して)写真、撮るじゃん。『いち早く、託児所の方に戻してください』ってお願いして。(子どもは)引き離された時点で泣いてるわけ。その泣き声が聞こえているうちは選手のスイッチが入んないから。その後は見ないようにしてた」

 岩清水さんは今季のリーグ開幕直前に左膝前十字靱帯を損傷。このけがは女性アスリートに多いけがでもある。

 「妊娠出産で(サッカーが出来るまで)1年くらいかかっちゃったから。(けがは復帰の)めどが見える。3か月でジョギングぐらいできることを考えたらリーグ後半戦はいける。切り替えは早かった」。最後に岩清水さんは「頑張ります」と力強く誓った。

プロフィル

岩清水 梓(いわしみず・あずさ)

日テレ・東京ヴェルディベレーザ所属。ポジションはDF。2011年ドイツW杯で優勝。12年ロンドン五輪で銀メダル。15年カナダW杯で準優勝。所属クラブではリーグ4連覇に貢献。2020年3月に第1子を出産し、現在も現役選手としてピッチに立つ。今年3月に初めての著書『ぼくのママはプロサッカー選手』(小学館クリエイティブ)を刊行。1986年生まれ。岩手県滝沢市出身。

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