ノーベル平和賞受賞のモハンマディ氏「女性抑圧を犯罪に」、国連規定化訴え…イラン獄中から読売新聞に手記
読売新聞 / 2024年9月14日 5時0分
2023年のノーベル平和賞を受賞したイランのジャーナリストで人権活動家のナルゲス・モハンマディ氏(52)は、首都テヘランの刑務所で執筆した獄中手記を読売新聞に寄稿した。抑圧下にある女性の人権擁護を訴えるモハンマディ氏は、性別に基づく差別「ジェンダー・アパルトヘイト」を犯罪と規定するよう国連に求め、影響力の行使を日本など先進国に訴えた。
モハンマディ氏は反国家プロパガンダ罪などで、累計30年以上の禁錮刑や154回のむち打ち刑を科された。一時保釈され、心臓手術を受けてから2か月足らずの2022年4月、刑務所に連れ戻され、獄中生活を送っている。
ペルシャ語の手記は、政治犯らを収容するエビン刑務所に収監されているモハンマディ氏から、協力者を通じて読売新聞に文字データで届けられた。「マフサ運動から2年」と題した手記は22年に女性の髪を隠すスカーフ「ヘジャブ」のかぶり方が不適切だとして警察で拘束されていた女性マフサ・アミニさん(当時22歳)の突然の死から16日で2年となることから始まっている。アミニさんの死は、イラン国内でのヘジャブ着用強制への抗議デモと政権による弾圧の発端となった。
手記の中で、モハンマディ氏は「女性、命、自由」をスローガンとする抗議デモについて「民主的な運動で、短期的、長期的にイランの社会に影響を与えた」と評価した。その上で、女性を抑圧する政策が「人口の半分の人権を奪い、民主主義、自由、平等、そして持続可能な開発を遅らせてしまう」と指摘した。
隣国アフガニスタンの女性抑圧政策にも触れ、これらを改める戦略として「国連が『ジェンダー・アパルトヘイト』を犯罪と規定することが最優先だ」と訴えた。実現のため「民主的な先進国が、国連の場で影響力を行使する」ことが必要だと記し、人権団体などの国際的な支援を求めた。
モハンマディ氏は昨年12月のノーベル平和賞授賞式への出席が政権から認められず、獄中から発した演説文をフランスに亡命中の息子と娘が代読した。
ナルゲス・モハンマディ氏 1972年、イラン北西部ザンジャン出身。「イマーム・ホメイニ国際大学」在学中から学生組織の刊行物に人権や女性問題の記事を執筆。卒業後は技術系会社に勤務する傍ら、改革派系紙などに記事を書いた。98年に政府批判の記事を書いて以降、逮捕と投獄が繰り返されている。2023年にノーベル平和賞を受賞。著書に過酷な独房生活を送った受刑者のインタビュー集「白い拷問」がある。
◆ジェンダー・アパルトヘイト=あるジェンダー(性別)による支配体制を維持するため、それ以外のジェンダーを組織的に抑圧、支配する非人道的な行為。女性の被害を念頭に使われ始めた表現で、南アフリカで1990年代前半まで続いたアパルトヘイト(人種隔離政策)になぞらえている。
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