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平日に学校休んで親子で活動、「ラーケーション」導入広がる…「体験の差」縮まりに期待

読売新聞 / 2024年9月14日 12時55分

 子どもが、休日に休みを取りにくい親と一緒に過ごせる「ラーケーション」が自治体に広がっている。保護者の都合に合わせ、子どもが平日に学校を休んでも欠席扱いとならない仕組みだ。休日に親子で活動できる家庭と、できない家庭で生じる子どもの体験の差が縮まる効果が期待されている。(福元洋平)

首里城を見学

 9月8日、羽田空港の到着ロビー。茨城県つくば市在住の医師の男性(49)一家は4泊5日の沖縄旅行を終え、スーツケースを手に手荷物受取場から出てきた。

 総合病院に勤務する医師は、8月のお盆期間中も同僚らと交代で診察にあたった。そのため、子どもの夏休み中は休暇を取りにくく、長期の家族旅行ができなかった。年5日を上限に子どもが学校を休める仕組みを茨城県が導入したことを知り、旅行を家族に提案した。

 学校が9月2日に始まってから、子どもたちは平日を3日間休み、沖縄で2019年に火災があった首里城や、沖縄 ちゅら海水族館などを見学した。家族で事前に首里城の歴史を学び、長女で小学3年の女児(9)は「再建の様子が見られてよかった。焼けた建材もまだ残っていた」と語った。

 男性は「小学生になってから、こんなにゆっくり家族旅行ができたのは初めてだ」と笑顔をみせた。

「学習」+「休暇」、愛知発

 ラーケーションは、「ラーニング(学習)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語だ。

 昨年9月に愛知県が全国で初めて導入した。市町村の参加は任意で、名古屋市以外の全市町村が参加する。山口県や熊本県などでも相次いで始めている。

 医療従事者や自営業、観光施設、ホテルなどで働く人は、子どもの休みに合わせて休暇を取りにくいという事情がある。総務省の社会生活基本調査(2021年)によると、有業者の45・5%が土曜、30・4%が日曜に働いていた。

 近年、家庭の経済状況や親の忙しさなどで子どもが自然体験や文化・スポーツ活動に参加できず、子どもたちの間で「体験格差」が生じることが懸念されている。愛知県でも休日に親が仕事に行き、親子で過ごす時間を持てない家庭が少なくないという。県の担当者は「保護者には、学校外でしかできない学びを子どもと一緒に計画してほしい」と呼びかける。

水族館半額で

 観光など地元の経済振興につながる面もある。茨城県大洗町の「アクアワールド県大洗水族館」は7月から平日限定の「ラーケーション特割」を導入し、入場料を半額にした。夏休み前には平日の小中学生の利用が増えたという。

 会社員の男性(42)は小学4年の長男と一緒に平日、高校の見学に行った。「子どもと過ごす時間が増えた。親子での活動が、子どもの興味を広げるきっかけになれば」と話した。

「給食事務が煩雑」「授業進度に影響」など懸念も

 一方、利用が広がるにつれ、新たな課題が浮かび上がっている。

 愛知県は今年1~2月、生徒や教職員などを対象に、ラーケーションに関するアンケートを実施した。負担に感じることを複数回答で尋ねたところ、高校生の4割が、「受けられなかった授業内容を自習で補うこと」を挙げた。

 小中学校などの教職員へのアンケートでは、6割が「給食事務が煩雑になる」、5割が「出欠把握や記録に手間がかかる」と答えた。3割は「多数の子どもが休むと授業進度に影響がある」との懸念を示した。

 愛知教育大の風岡治教授(教育経営学)は「親子で外出すると、行動範囲が広がり、親の姿を見て子どもにも社会性が身につくメリットがある。制度が広がれば、保護者も休みが取りやすくなるだろう。ただ、自治体は、教員の負担増とならないよう配慮する必要がある」と指摘している。

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