総裁選討論会 気概だけで首相は務まらぬ
読売新聞 / 2024年9月15日 5時0分
内外の課題を克服しようという気概は感じられたが、総裁候補が唱えた主張は本当に実現可能なのか。疑問を感じるものも散見された。
自民党総裁選の候補者9人が、日本記者クラブ主催の討論会に臨んだ。議論の焦点の一つとなったのが、外交・安全保障政策だ。
石破茂元幹事長は、米国が同盟国に負担を求めていることについて「在日米軍基地の役割を説明する。誰が大統領になっても日本の主張は認められる」と述べた。
他の同盟国に比べ、日本が米軍に提供している基地は広大で、駐留している兵力も最大だ。米国がアジアで利益を享受できているのは、日本の協力があるからだと丁寧に説明していく必要がある。
石破氏はまた、中国や北朝鮮の脅威の増大を踏まえ、「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」の創設を提案した。
日本は、国の存立が脅かされる事態などに限って集団的自衛権の行使を認めている。現状、NATOのような安全保障体制に参画するのは難しいのではないか。
小泉進次郎元環境相は、日中関係について「トップ外交で切り開いていく」と語った。
中国は巨額の支援で途上国から一定の信頼を得ている。ロシアと軍事協力を深めていることも軽視できない。そうした国際情勢や戦略を
討論会では、解雇規制の見直しも論点となった。
小泉氏は、大企業が社員を整理解雇する際、学び直しや再就職支援を義務付ける案を唱えている。だが、この構想では働く人の意思に関わりなく解雇が可能になるため「簡単にクビにされるのでは」という不安の声が出ている。
構想は成長分野に人材を移動させる狙いがあるというが、成長分野とはどのような産業なのか。再就職支援といっても、働く人にも向き不向きがあるだろう。また、人材の流動化は既に転職が活発化するなど現実に進行している。
このほか選択的夫婦別姓について小泉氏は「30年続いた議論に決着をつける」と語った。「30年」とは、1996年に法制審議会が選択的夫婦別姓の導入を提言したことを指しているようだ。
だが、その後も議論が続いているのは、家族のあり方を大きく変える可能性があり、社会を分断しかねないなど、簡単な問題ではないからだ。一刀両断で結論を出せば、禍根を残しかねない。
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