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「南北融和」推進する韓国の統一省、平和的な統一「非現実的」との意識浸透し曲がり角に

読売新聞 / 2024年9月16日 5時0分

 分断国家である韓国には、北朝鮮との統一を推進する統一省が存在する。平和的な統一は実現が遠のき、役割は曲がり角を迎えている。

「資本と技術」「土地と労働力」提供

 統一省は1998年、北朝鮮に融和的な 金大中 キムデジュン政権下で誕生した。統一省が所管した対北朝鮮協力事業は、冷戦終結によって後ろ盾のソ連(ロシア)からの経済支援を失い、破綻状態にあった北朝鮮に貴重な外貨収入をもたらした。

 政府組織法では「統一および南北対話、交流・協力に関する政策の樹立、統一教育、その他統一に関する事務を管轄」すると規定された。各省庁に分散する部署を69年にまとめて設置した国土統一院(90年に「統一院」に名称変更)が前身だ。

 対北協力事業としては、韓国人が北朝鮮の景勝地を訪問する 金剛山 クムガンサン観光事業(1998年~2008年)、韓国が資本と技術、北朝鮮が土地と労働力を提供して衣服などを製造する 開城 ケソン工業団地(2004年~16年)が有名だ。協力事業を話し合う南北閣僚級会談の韓国首席代表は統一相が務めた。

 南北当局間の公式対話窓口としては、軍事境界線上の 板門店 パンムンジョムに南北連絡事務所が設置された。実際は韓国が板門店南側の「自由の家」、北朝鮮が北側の「板門閣」に事務所を構え、2本の直通電話と光通信ケーブルで結んだものだった。対北融和の 文在寅 ムンジェイン前政権下の2018年9月には、北朝鮮の開城に韓国と北朝鮮の当局者が常駐する南北共同連絡事務所が開設され、連絡業務が24時間可能になった。連絡事務所には南北当局間の会談や連絡を担当する「連絡協力部」、経済協力を担当する「交流部」、全体を総括する「運営部」の3部署が置かれ、統一省職員など計30人が配置された。

協力推進あだに

 こうした取り組みは、対決より対話や経済協力を進めた方が緊張緩和をもたらすという金大中氏の考えに基づくものだったが、北朝鮮が核・ミサイル開発を加速させる結果に終わった。

 開城工業団地で得た外貨の7割が朝鮮労働党に上納され、核・ミサイル開発に流用されたとする韓国政府の分析もある。

 文在寅前政権は 金正恩 キムジョンウン朝鮮労働党総書記との会談を通じて、協力事業の再開を約束したが、国連安全保障理事会が13年3月に大量の現金の北朝鮮への移転を禁じた制裁決議に触れ、断念した。北朝鮮は20年6月、韓国の脱北者団体が正恩氏を批判するビラを風船で飛ばしたことに反発して南北共同連絡事務所を爆破。統一省の存在意義は急速に薄れた。

保守政権誕生のたび 廃止論

 韓国ではこれまで対北融和政策を進める左派から、対北強硬政策をとる保守への政権交代のたびに、統一省の廃止論が浮上してきた。

 22年に就任した保守の 尹錫悦 ユンソンニョル大統領は統一省を「対北支援省」とみなし、23年9月に大規模な組織改編を行った。南北交流・経済協力を担当する4組織を「南北関係管理団」にまとめた。「交流協力」の名称を持つ部署は消えた。約15%にあたる81人の人員削減も断行した。

 新たに力点を置くのは北朝鮮の人権問題の啓発だ。23年4月、「人道協力局」を「人権人道室」に格上げした。

 尹氏は7月14日、今年制定した初の「脱北者の日」の記念式典で演説した。北朝鮮から逃れてきた人など約200人をソウルに集め、外国に逃れた脱北者が北朝鮮に送還されないよう「あらゆる外交的努力を尽くす」と宣言した。行事は統一省が主管した。統一省は23年3月には脱北者約500人の証言を基に公開処刑や政治犯収容所など人権弾圧の実態をまとめた報告書も初公開した。

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