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イラン獄中手記 命がけの訴えに行動で応えよ

読売新聞 / 2024年9月16日 5時0分

 性差別の撤廃や個人の自由の尊重は、政治体制や宗教にかかわりなく守られるべき、普遍的な価値である。獄中からの痛切な訴えに、国際社会は行動で応えるべきだ。

 イランの人権活動家で、昨年、ノーベル平和賞を受賞したナルゲス・モハンマディ氏が、読売新聞への手記で、イランで女性が抑圧されている現状を批判した。

 特に、女性の髪を隠すスカーフ「ヘジャブ」着用の強制は、宗教的な理由というより、「女性の支配や抑圧」の手段であるとして糾弾した。モハンマディ氏の訴えが、多くのイラン国民の声を代弁していることは明らかだ。

 イランでは2年前、ヘジャブのかぶり方が不適切だとして20代の女性が拘束され、不審死した。これを機に「女性、命、自由」を合言葉にした大規模な抗議デモが各地で数か月にわたり続いた。

 7月に行われた大統領選では、大方の予想に反し、国民の自由や国際社会との対話を重視する改革派のペゼシュキアン氏が勝利した。現体制がイスラムの規範を大義名分に人権を抑圧してきたことへの、不満の表れに違いない。

 それでも最高指導者のハメネイ師を頂点とする体制は、モハンマディ氏への弾圧を緩めようとしない。彼女の主張を受け入れてしまえば、体制の正当性が揺らぎかねないと見ているからだろう。

 しかし、こうした対応を続けていては、民主化要求は収まらず、国内はかえって不安定化するのではないか。イランは核開発を巡り欧米から制裁を受けている。人権問題でも国際的な圧力が一層強まるのは避けられない。

 モハンマディ氏は手記で、イランのほか隣国アフガニスタンで女性が犠牲となっている状況を「ジェンダー・アパルトヘイト」と呼び、これを犯罪と規定するよう国連に強く求めている。

 日本は年末まで国連安全保障理事会の非常任理事国を務める。国連で議論を主導すべきだ。女性に対する抑圧は、国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)が規定するジェンダー平等の実現にも反している。

 懸念されるのはモハンマディ氏の心身の状態である。心臓や肺の病気を抱えながら、長年、刑務所の劣悪な環境に耐えている。

 獄中からメッセージを発信することでさらに弾圧される恐れも顧みず、欧米ではなく、イランと友好関係にある日本の新聞に手記を託した。その事実を日本は重く受け止める必要がある。

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