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スケートボードの「神」を超えた10歳・河上恵蒔、天を仰ぐ姿に世界は震えた…Xゲームズは「ヤバい技決める」

読売新聞 / 2024年9月17日 10時30分

Xゲームズ・ベンチュラ大会に出場した河上(C)Trevor Brown, Jr./X Games

 「神の降臨」――。「X Games Chiba 2024」(Xゲームズ千葉大会)が千葉市の幕張メッセで9月20~22日、開かれる。ここで、伝説が生まれるかもしれない。今年、スケートボード界に衝撃を与えた男子バートの河上 恵蒔 (えま)が出場を決めたからだ。小学校4年生の10歳。「神の正統後継者」と感じざるを得ない、そんな逸話をもつ少年だ。(デジタル編集部 古和康行)

好きな給食のメニューは「焼き魚」

 河上は、兵庫県神戸市に住んでいる。学校が大好きで、授業中に先生の質問に答えられるとうれしい。休み時間には鬼ごっこやドッジボールをすることにハマっている。好きな給食のメニューは「焼き魚」とちょっと渋め。学研教室にも通って、勉強にもぬかりない。

 お父さんの 竜平 (りょうへい)さん(41)の運転する車に乗って、平日午後7時から10時前まで近くのパークで練習する。夏は暑いから休日も同じ時間に練習。週に4回ほどスケボーに乗っていて、インスタグラムにアップする動画が「『やばいね』『すごいね』とコメントされると、もっとすごいのを見せてあげたくなる」。

 普通のスケボー好きの少年のようだが、そのコメント数が5000件を超えているとしたら? 賞賛の声が世界のトップスケーターからのものだったら? アメリカのテレビ局から「動画を使わせてほしい」というメッセージが届いたら? その緩やかに流れる日常からは想像できない激流の中に、河上はいる。

史上初の3連発

 今年、河上がスケートボード界にインパクトを与えたのは「900」という大技を3連続で決めたからだ。スノーボードのハーフパイプのようなコースで空中に飛び上がって技を競う「バート」。この種目で大技として知られるのが空中で2回転半する「900」だ。河上はこの技を今年6月、初めて3回連続で決めた。「最年少」ではない、スケートボードの歴史上、「初めて」である。

 900は「スケートボードの神」と呼ばれるトニー・ホーク(アメリカ)が1999年のXゲームズで初めて成功させた技だ。それ以来、すべてのスケーターの憧れのトリックとなった。今年、スケートボードの母国、アメリカのスポーツ専門局「ESPN」が「900誕生25周年」という企画を立ち上げたことからも、その技が“特別”であることが分かる。そして、この企画こそが河上の転機になった。

天才の片りん

 河上がスケートボードを始めたのは4歳の頃と早いが、その特別な才能は、もっと前から垣間見えた。

 2歳の時のことだった。足で地面を蹴って進む二輪車が大好きだった河上。自宅の裏の遊歩道で遊ぶ姿を見て竜平さんは「コマ(補助輪)なしでも行けるんちゃうか」と思い立った。自転車に乗せたところ、案の定、河上は初日で乗りこなした。気を良くした父は「自転車競技やったらBMXやろ」ということで、BMXを買った。「乗り物好き」の河上はご機嫌で自転車で遊んだ。ほかにも、キックボードなどいろいろな乗り物に乗った。

 竜平さんは「こんなに乗り物好きだったら、毎年1~2回行っていたスノーボードで一緒に遊びたい」と思った。そこでスノーボードを買い与え、土日になると一緒にスノボに乗った。ある日、スノーボードの用品をスポーツ店に買いに行ったときに、河上の目にスケートボードが飛び込んできた。河上は「やりたい」と父にねだった。

 竜平さんはスケボーの経験はなく、また、この店にはスケボーを教えてくれる人はいなかった。そこで、竜平さんの地元・兵庫県明石市にあるスケートボードショップに行くと、購入すれば体験会を開いてくれるということになった。そこから、練習に通うようになり、「日記がわりに」(竜平さん)父は息子の姿を動画に撮り、インスタグラムにアップした。どこにでもある親子の風景――のはずだった。

 だが、事態は急転する。ある日、河上が練習場でいきなりこんなことを言い出した。「バックサイド540がやりたい」。この技は、空中で1回転半するトリックで、「小学生でも苦労する大技」(竜平さん)だったが、当時6歳の河上はこれを、2日間で習得する。この動画が瞬く間にインスタグラムで拡散。海外の著名人がシェアしたり、「史上最年少では?」というコメントも寄せられたりしたことで、竜平さんは自らの息子の才能を確信した。河上はそのあとも練習を積み重ね、7歳の夏に900を完成させる。その2年後に900を2回連続で成功させられるほどまでに実力をつけた。

世界にとどろく「エマ・カワカミ」の名

 今年春、インスタグラムに投稿された河上の900の動画を見たESPNから「900の25周年の企画で河上の動画を使わせてほしい」とメッセージが入った。竜平さんは突然の連絡に戸惑いながらも契約書にサインした。ESPNからは「アメリカに来る予定はないか?」と尋ねられたが、そもそも河上には海外大会の経験もなかった。ESPN側はさらに「バートアラートには出ないのか?」と尋ねる。

 「バートアラート」。正式名称は「トニーホークス・バートアラート」という。大会名の通り、トニー・ホークが主催する大会だ。出場条件は厳しく、箸にも棒にも掛からないはずだった。「出る予定はない」と答えたら、「主催者に聞いてみる」とESPNから回答があった。そこからしばらくたつと、バートアラートから連絡があった。「ワイルドカードで出場してほしい」と。

 トニー・ホークの見守るこの大会で決勝に勝ち進んだ河上は、「900」を史上初めて3回連続で決めた。観客が沸き立つ中、「トニー・ホークに向かって、『やったよ』っていう感じで」河上は両手を突き上げ、天を仰ぐセレブレーションを見せた。そして、「たまたまやった」(河上)このセレブレーションが、トニー・ホークが過去に見せたそれと酷似していたのだ。レジェンドから極東の小学生へと受け継がれていく900。スケートボード業界に激震が走り、「エマ・カワカミ」の名前は一気に世界へと広まった。

過去2大会は「見学」

 そんな河上がXゲーム千葉大会にお目見えする。河上にとってXゲームズは、「普段の練習では関わることのない、動画の中でしか見たことがない人たちが出る大会。ヤバいスケーターがたくさんいる場所」だ。

 バートアラートで上位に入賞し今年6月にXゲームズ・ベンチュラ大会には出場したが、これまでのXゲームズ出場はこの1回のみ。2022年から始まった千葉大会は過去2回、見学に訪れていたという。憧れの大会に初出場する今回、「絶対にヤバい技を決めて、観客を沸かせたい」と意気込む10歳。「神」の技を進化させた小学生は、新たな伝説を打ち立てられるか――。

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