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「仕事が好きでない」早期リタイア希望20~30代男性急増 「投資で稼いで好きな生き方したい」と言うが...大丈夫?(2)/パーソル総合研究所・金本麻里さん

J-CASTニュース / 2024年9月17日 18時32分

「仕事が好きでない」早期リタイア希望20~30代男性急増 「投資で稼いで好きな生き方したい」と言うが...大丈夫?(2)/パーソル総合研究所・金本麻里さん

資産運用に自信は(写真はイメージ)

「早期リタイア」を希望する20~30代男性が急増している。理由の第一は「働くことが好きでないから」とか。

50~55歳までに会社を辞め、資産運用などで稼いで、好きなことをして生きたいという。それが実現できればうらやましいが、大丈夫なのか?

若者の間に広がる「早期リタイア」の動きをリポートにまとめたパーソル総合研究所の金本麻里さんに話を聞いた。

投資マネー利用の早期リタイアは、人手不足を加速させる

<「仕事が好きでない」早期リタイア希望20~30代男性急増 「投資で稼いで好きな生き方したい」と言うが...大丈夫?(1)>の続きです。

――バブル崩壊後は、仕事にやりがいを求める時代は終わったということでしょうか。

金本麻里さん バブルが崩壊してからの「失われた30年」で、働くことに対する意識が大きく変わっています。今の若者にとって「お金のため」に働くことは、決しておかしな考え方ではありません。むしろ、仕事に「やりがい」や「生きがい」を強調することは、ブラック企業によくある「やりがい搾取」か、という批判の対象になりかねません。

近年(2015年)の国際比較の意識調査でも、日本の就業者は欧米などに比べ、仕事に「自分の生活のため」「お金のため」以上の意味を見出す割合が低いという結果が出ています。

――どうしてそうなったのでしょうか。

金本麻里さん 背景には、バブル崩壊後に企業と従業員の関係性が変化し、企業が終身雇用と年功序列を保証する代わりに大きな権限をふるうということがなくなり、「企業が自分の面倒を見てくれない」という意識が強くなっていることがあげられます。「キャリア自律」が求められるなか、具体的なキャリアを描けない若者も多いと言われます。

企業が若手の成長やキャリア形成にフルコミットしなくなり、若者も仕事にフルコミットしなくなったとも言えます。調査結果からは、「成長実感」がない20代は、早期リタイアを求める傾向が強い傾向もあります。

――う~む、困ったことですね。私のようなシニア世代は「元気なうちは働き続けたい」「働いて社会と関わりをもっていたい」という意識が非常に強いです。実際、「生涯現役で働きたい」シニアが増えているのに、若者が「早期リタイアしたい」と、真逆のことを望んで日本はどうなるのでしょうか。

金本麻里さん ご指摘のとおり、構造的な人手不足社会はすぐそこまで来ています。生活に必要不可欠なインフラを支える労働力そのものが足りなくなるなかで、投資マネーを用いた「早期リタイア」が増えることは時代に逆行しています。この傾向が続けば問題が大きくなるでしょう。

社会や企業は、自分なりの成長やキャリアを築こうとする若者を応援してほしい。1人でも多くの若者が仕事を楽しみ、仕事に価値を見出し大成していけるようにすることがとても重要です。

働く喜びを味わい、仕事で笑って幸せになってほしい

――今回の調査で特に強調しておきたいことや、若い人たちへのアドバイス、エールがありますか。

金本麻里さん 将来不安が高まり、ワークライフバランス重視の労働観が強くなり、FIREや投資ブームが起こるなど、さまざまな社会的条件が整えば、若い人が早期リタイアを望むのは自然なことです。

しかし、誤解を避けるために強調しておきたいのは、あくまで将来展望の話なので、若者たちの目の前の仕事への意欲が低下しているわけではない点です。

もっとも、20代で成長実感が停滞するような環境にいる人ほど、早期リタイアを希望しやすいのは、アンビバレンツ(相反する感情を同時に持つこと)な結果です。成長できていないのなら、稼いで早期リタイアすることがいっそう難しくなります。

まず、転職や資格の勉強なども含めて、仕事のスキルを磨いてほしい。それが自分なりのやりがい・関心を見つけ、仕事が面白い・続けたいと感じるきっかけになると思います。投資で稼ぐために経済を勉強することも、重要なスキルになると思います。

当社の「はたらく幸せ」についての研究では、仕事での成長や新しい発見・刺激が、はたらくことを通じた幸福感を最も高めることがわかっています。ぜひ、仕事での成長や刺激を感じながら、仕事で笑って幸せになってほしいと切に願っております。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)



【プロフィール】
金本 麻里(かねもと・まり)
パーソル総合研究所シンクタンク本部研究員

東京大学大学院総合文化研究科修了。総合コンサルティングファームに勤務後、人・組織に対する興味・関心から人事サービス提供会社に転職。適性検査やストレスチェックの開発・分析報告業務に従事。調査・研究活動を通じて、人・組織に関する社会課題解決の一翼を担いたいと考え、2020年1月より現職。

専門分野:職場のメンタルヘルス、アセスメント・サーベイ開発、障害者雇用。産業カウンセラー、日本感情心理学会所属

主なリポートに「職場の精神障害のある人へのナチュラルサポートの必要性 ~受け入れ成功職場の上司・同僚の特徴から~」「ミドル・シニア就業者の趣味の学習実態と学び直しへの活用法」「ハラスメント被害者の泣き寝入りと離職の実態」「仕事における幸福(Well-being)の状況~世界各国の『はたらいて、笑おう。』調査データから見る~」など。

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