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ヒズボラの通信機器一斉爆発、死者12人に…ヒズボラはイスラエルの攻撃と断定し報復示唆

読売新聞 / 2024年9月18日 23時20分

17日、レバノンの首都ベイルートのスーパーで、男性のかばんが爆発する様子=ソーシャルメディアから、ロイター

 【エルサレム=水野哲也、田尾茂樹】レバノン各地で17日、イスラム教シーア派組織ヒズボラメンバーらの通信機器が一斉に爆発し、レバノン保健省によると、子どもを含む12人が死亡、約2800人が負傷した。通信機器に爆発物を仕込んで起爆させたとみられる。ヒズボラは声明でイスラエルの攻撃だと断定し、報復を示唆した。ヒズボラメンバーを狙った通信機器の爆発は18日もあった。

    ■携帯禁止逆手に

 17日に爆発したのはポケットベルのような小型通信機器だ。米紙ニューヨーク・タイムズによると少量の爆発物が仕込まれていた。午後3時30分頃にヒズボラ指導部を装ったメッセージを受信した後、爆発した。ヒズボラの拠点がある隣国シリアでも爆発が起きたという。

 ロイター通信はレバノン当局者の話として、ヒズボラが発注した5000台が今年初めに納入され、製造段階でイスラエルの対外情報機関モサドによって爆発物が埋め込まれたと伝えた。社名が報じられた台湾の電子機器製造会社は18日の声明で、ハンガリーの会社に商標権を与え、製造・販売された機器だと述べた。

 イスラエルの攻撃で多くの要員を失ったヒズボラは、イスラエルによる通信や位置情報の傍受を避けるため、指導者ハッサン・ナスララ師が2月に携帯電話の使用禁止を命じ、今回の機器を使っていた。イスラエルはそこを狙って攻撃を準備したとみられる。

     ■抑止力誇示?

 イスラエルとヒズボラの戦闘はこれまで主にレバノン南部の国境地帯に集中していたが、今回の爆発は時と場所を選ばずヒズボラメンバーを攻撃できることを示した。ヒズボラや他の親イラン勢力、イランに対し、イスラエルの高度な技術力や情報収集力を誇示し、抑止効果を狙ったとみられる。

 イスラエルは、1990年代にイスラム主義組織ハマスの爆弾製造担当者の携帯電話に爆発物を仕込んで暗殺するなど、通信機器を狙った作戦を実行してきたとされるが、死傷者数千人という規模は前例がない。

 モサド元幹部ミシュカ・ベンダビッド氏は「ヒズボラにとっては、 諜報 ちょうほうや物資供給などにかかわる数千人のメンバーが戦時に職務を果たせなくなる。深刻な影響は明らかだ」とみる。

 米ニュースサイトのアクシオスは米当局者らの話として、イスラエルが当初、ヒズボラとの全面戦争の際に今回の機器を爆発させる計画だったが、ヒズボラ側に発覚しそうになったため、17日に実行したと報じた。

    ■全面戦争の懸念

 ヒズボラ指導者ナスララ師は19日に演説する。今後の対応が焦点だ。

 通信ネットワークへの侵入を許したのは大失態だ。通信手段の見直しや情報 漏洩 ろうえい対策を余儀なくされる。レバノンでは深刻な経済危機が続く。報復によってイスラエルの猛反撃を招けば、経済への打撃は避けられない。国内でヒズボラへの不満が噴き出す懸念もあり、全面戦争は避けたい。8月下旬の攻撃の応酬でも、限定的な報復にとどめた。

 一方、イスラエル政府には、戦闘の重点をパレスチナ自治区ガザから北部に移し、地上作戦に乗り出すべきだとの強硬論も広がる。17日には、ヒズボラとの戦闘の影響で避難している北部住民の帰還を、ガザで続く戦闘の新たな目標に掲げると発表しており、米バイデン政権は特使を派遣し、戦闘の拡大を自制するようイスラエルに求めている。

 ◆ヒズボラ=1982年にイランの支援を受けて結成されたイスラム教シーア派の政治・軍事組織。レバノン国会に議席を持つ。指導者はハッサン・ナスララ師。反イスラエル、反米を掲げ、イスラム主義組織ハマスよりはるかに大きな戦力を擁するとされる。

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