10代女性にとってSNSは「自己実現」「人生観」まで影響する存在 「SNSないと困る」9割の実態
J-CASTニュース / 2024年9月18日 18時46分
SNSは人生観まで影響するツール?
10代女性の大半がSNSは「なくてはならない」もの――。NTTドコモの研究機関、モバイル社会研究所(東京都千代田区)が2024年9月5日に発表した調査「10代女性SNS利用者の約9割が『SNSが使えなくなると困る』」という調査でわかった。
自己実現や人生観にまで影響する、深い存在になっているという。それって、スマホ依存ではないのか。調査担当者に聞いた。
利用者多い「LINE」をあえて外した調査結果
モバイル社会研究所の調査(2024年2月)は、全国の15~59歳の男女3936人が対象だ。リポートでは、SNS利用者は、「X」「Instagram」「Facebook」「TikTok」のいずれかを利用している人とし、利用者が一番多い「LINE」をあえて外している。
まず、10代~50代のSNS利用者にSNSの必需性を調査した。「SNSが使えなくなると困ると感じるか」を聞くと、全体の約7割が「使えなくなると困ると思う」と答えた。
女性と若年層ほど割合が高く、10代女性では「困る」が約9割(89%)と最も高い。最も低い男性50代でも約半数(51%)が「困る」と答えている。多くの人がSNSの必需性を感じていることがわかった【図表1】。
さらに、SNSの必要性を突っ込んで調べるために、「SNSは自分にとってなくてはならないと思うか」を聞いた。【図表2】がその結果だ。全体の半数以上(55%)が「SNSはなくてはならない」と答えた。こちらも、女性・若年層の割合が高く、10代女性の8割強、10代男性の8割弱がなくてはならない存在になっている。
一方で、30代以上の男性では4割程度となっており、SNSに対する必需意識が低い人が半数以上だった。
最後に、「一般に他人が知っていて、自分が知らないことがあると恥ずかしい」と思うことを「情報欲求が高い」と定義し、情報欲求の高低によってSNSの必需意識に違いがあるかを調べた。
【図表3】と【図表4】がその結果だ。情報欲求が高い人ほど、「SNSが使えなくなると困ると思う」割合と、「SNSは自分にとってなくてはならないと思う」割合が高いことが明らかになった。
これは、SNSが知識や情報を得るためのツールとして活用されていることが示唆しているが、それがどんな意味を持つのだろうか。
SNSは空気や水のように、命に関わる存在か?
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったモバイル社会研究所の小島誠也さんに話を聞いた。
――そもそもの疑問ですが、これまでモバイル社会研究所の調査では、SNSにはLINEが含まれていたのに、今回の調査に限ってSNS利用者を「X」「Instagram」「Facebook」「TikTok」に限定し、LINEをあえて外したのはなぜでしょうか。何か狙いがあるのですか。
小島誠也さん LINEは、個人間もしくはグループ内など閉じた関係でのコミュニケーションによる利用が多いSNSです。一方、XやInstagramなどは不特定多数に向けた発信などオープンなやり取りも多く見られます。
今回の調査では、後者の「オープンな特性」によって生じるユーザーの特徴などを明らかにするため、あえてLINEを対象とせずに調査を行っています。
――つまり、身近な人との日常的なコミュニケーションに使っている必需性をあえて排除したわけですね。
しかし、もう1つの疑問は「SNSを使えないと困る」と「SNSは自分にとってなくてならない」の違いが、どうもよくわかりません。前者は、生活のツールとして必要だが、後者は空気や水のように命に関わる必需品に近いという強い意味を持っているのでしょうか。
小島誠也さん 「SNSが使えなくなると困る」は、当面の利便性・必要性に重点を置いた質問であり、SNSの利活用度合いや偏重度合いであると考えられます。
一方で、「SNSは自分にとってなくてはならない」は、その人にとってのSNSの重要性(SNSに対する価値観)に重点を置いた質問であり、利便性にとどまらず自己実現や人生観なども含んだ各自の感覚であると考えられます。
SNSから人との交流、人生を学ぶ人も増えている
――自己実現や人生観といった精神的なものまで絡んでくるとなると、相当の強い必需性になりますね。
最後に「情報欲求」の高さ、低さに応じて必需性を聞いていますが、「情報欲求」も現在の若者の空気や水にあたるということでしょうか。
小島誠也さん 「情報」が若者の空気や水にあたるかとまでは言えません。【図表3】と【図表4】では、年齢によらず情報欲求が高いことが、SNSの必需意識を高めていることを示しています。
「一般に他人が知っていて、自分が知らないことがあると恥ずかしい」を「情報欲求」と定義して聞いていますので、逆に言えば、知らないことを知らない、と率直に受け入れる人は、そうでない人に比べ、SNSの必需意識が低くなっている、とも解釈できます。
――いずれにしろ、これほど「SNSがないと困る」「SNSは自分にとってなくてはならない」と思う人が多いのは、スマホ依存の面で問題があるのではないでしょうか。現在70代の私は、LINEは使っていますが、「X」「Instagram」「Facebook」「TikTok」を使ったことがないし、少しも困っていません。
老婆心ながら、SNSに使う時間があるなら、もっと本を読んだり、生身の人と会ったり、アウトドア活動をしたり、劇場などで生の音楽・演劇・映画などに触れたりしたほうがいいと思いますが、いかがでしょうか。
小島誠也さん 前半のスマホ依存の問題につきましては、この調査結果からは判断ができかねます。依存のような傾向がみられる場合には注意が必要ですが、そうでない場合も多分にございます。
昨今、SNSを用いてニュースや生活に必要な情報を取得している人も増えているほか、SNSの利用が人間関係の拡大・深化に寄与しているとも考えられます。
そういった点でこうした必需意識があると考えると、文章を読むということや人との交流、そのほかいろいろなものに触れる機会がSNSによってもたらされているとも言えます。
多くの人に必需となったSNS、トラブルだけはご注意を
――なるほど。今回の調査で特に強調しておきたことや、SNS利用者に対するアドバイスがありますか。
小島誠也さん 今回の調査結果からわかる通り、多くの人に必需となりつつあるSNSですが、SNSの利用によってトラブルに巻き込まれる事例などもございます。
そういった被害にあわないよう、十分に注意しつつSNSをご利用いただければ幸いです。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
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