北海道発の高校生バンド「テレビ大陸音頭」、「狂った動き」が持ち味のド派手なステージング…歌詞「深い意味はない」

テレビ大陸音頭。Ｇｔ．鈴木隆太郎（８月１３日午後９時４分、東京都渋谷区のライブハウス「ＴＯＫＩＯ　ＴＯＫＹＯ」で）＝高田結奈撮影

　この夏、ＳＮＳをきっかけにバズり、注目を集めた高校生バンドを知っているだろうか？　その名も「テレビ大陸音頭」。彼らはいったい、何者なのか。そして、無名だった彼らが一気にスターダムにのし上がったワケとは…？　今やメディアにも引っ張りだこの３人のライブを取材し、魂のこもった音楽へのこだわりに迫った。（読売中高生新聞編集室　高田結奈）

　「テクノ聴きながら歩いてくのーー！」

畳 （ たた ） みかけるようなフレーズに、ロックもパンクも詰まった熱いサウンド。わずか１分３４秒の短い楽曲だが、派手なパフォーマンスが合わさり、一瞬にして耳も目も 奪 （うば）われる。

　８月中旬、東京都渋谷区のライブハウス。体を前後左右に揺らし、力強くギターをかき鳴らす鈴木 隆太郎 （こうたろう）さん（１８）、スティックを飛ばさんばかりの勢いで激しくドラムをたたくヤナガワヒロトさん（１７）、そして、ほえるように歌い叫ぶボーカルの 千代谷 （ちよたに）竜司さん（１７）の３人が、ステージで暴れていた。そんな彼らの動きに呼応するかのように、客も身を乗り出し、全身で音を楽しんでいる。

　この曲は、今年彼らを広く世に知らしめた「俺に真実を教えてくれ！！」だ。

　音楽関係者の目に留まったことをきっかけに、３月に配信が始まると、サブスク大手「Ｓｐｏｔｉｆｙ」がＳＮＳなどの動きを指標化した「バイラルチャート」で６月、３週連続１位を 獲得 （かくとく）。若者らの間で大きな話題となった。

バンド名は先人から

　実は彼ら、札幌市の札幌 厚別 （あつべつ）高校に通う高校３年生。軽音楽部で出会い、２０２２年の冬に別のメンバーを交えた前身のバンドが誕生。担当楽器の変更などを経て、昨年春に現在の「テレビ大陸音頭」が結成された。

　一風変わったバンド名は、３人が好きなバンドや単語に由来する。１９７０年代に活躍したアメリカのパンクバンド「テレヴィジョン」、８０年代に活躍した日本のロックバンド「暗黒大陸じゃがたら」から、それぞれ一部をとった。最後の「音頭」は「日本っぽいイメージ。それに、ローマ字表記にしたとき『Ｏｎｄｏ』って、かっこいいから」（鈴木さん）という理由なのだそうだ。

深夜２時のひらめき

　大ブレイクのきっかけとなった「俺に真実を教えてくれ！！」が生まれたのは、昨年６月。結成して間もなく、オリジナル曲が少なくてもどかしさや 焦 （あせ）りを感じていた頃だ。

　「もうめちゃくちゃだ！！」「フラストレーション大爆発」。印象的な歌詞は、千代谷さんが書いた。「深い意味はなく、語感重視」で作ったそうで、「（思いついたのは）確か深夜２時くらい。当時の心境が爆発したんだと思います」と振り返る。

　ほかの曲作りでも、中心を担うのは千代谷さんだ。まず、千代谷さんが音楽制作ソフトを用いてデモ音源を作成。３人とサポートメンバーが近所のスタジオで音を合わせ、それぞれがアレンジを加える。千代谷さんは、授業中に歌詞やメロディーを考えてしまうこともあるのだとか。現在、オリジナル曲は１０曲ほどにまで増えた。

　音楽面では、１９７０年代後半から８０年代前半の「ポストパンク」に影響を受けている。圧倒的な演奏テクニックもさることながら、「持ち味は派手なステージング。 奇抜 （きばつ）な格好や狂ったような動きが自分たちらしいし、こだわっている」（ヤナガワさん）という。実際、ＳＮＳでは「高校生とは思えない」「ライブと普段のギャップがすごい」と、そのパフォーマンスでさらに注目を浴びている。

今後は活動控えるが…

　今後のさらなる活躍が期待される彼らだが、大学受験の準備のため、しばらくは活動を控える予定だ。その先にはいったい、何を見据えているのだろう――。今後の目標を尋ねると、「フジロックみたいな、でっかいフェスに出たい！」と口をそろえた。大舞台で３人が爆音を鳴らし、観衆を沸かせてくれる日が待ち遠しい。