臓器移植見送りが昨年509人、人員・病床不足などで…厚労省が初調査
読売新聞 / 2024年9月21日 5時0分
脳死者からの臓器を移植する施設が、人員や病床の不足などを理由に臓器の受け入れを断念している問題で、移植を見送られた患者が2023年だけでのべ509人いたことが、厚生労働省による初の実態調査でわかった。これまで判明していなかった
本紙は今年1月、東京大、京都大、東北大の3大学病院が、23年に少なくとも60件超の臓器(心臓、肺、肝臓)の受け入れを断念していたことを報じた。移植医療を所管する厚労省は5月、参院厚労委員会で、実態調査を行う方針を表明した。
臓器のあっせん順位は、日本臓器移植ネットワーク(JOT)が、脳死者からの臓器提供例が出る度、臓器別の待機患者リストから、待機期間や重症度などを踏まえて決める。上位の患者から順に、登録先の移植施設に連絡し、受け入れを要請する。施設は辞退する場合、理由も返答する。
今回の調査は、JOTが23年にあっせんした、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸の記録を全て確認。同年に脳死判定を受けた131人の831の臓器のうち、あっせんしたものの、最終的に移植が成立しなかった192の臓器(心臓6、肺25、肝臓9、膵臓45、腎臓8、小腸99)の経過を追った。1人の患者が複数の提供例で見送られる場合もあるため、のべ人数となる。
その結果、一つの臓器を複数の施設が辞退したことにより、多くの患者が見送られていた実態が浮き彫りになった。192臓器のあっせんで、移植が見送られた患者はのべ3706人。このうち509人が、人員や病床が確保できないなど院内態勢が整わないことが理由となった。内訳は多い順に、肺364人、膵臓55人、心臓53人、小腸17人、肝臓15人、腎臓5人だった。
このほか「移植に適した臓器ではない」と施設が判断したケースなど提供者側の医学的理由や、「体格が合わない」「患者が別の病気で治療を受けている」などがあった。
調査では、いずれかの施設が臓器を受け入れ、移植が成立した639臓器については、データが膨大だとして分析対象から外した。このため、あっせん順位が上位なのに、院内態勢を理由に移植が見送られた患者は、実際には今回の結果より大幅に多いとみられる。
60件超の断念例があるとした本紙の調査は、最終的に移植が成立したかは問わず、移植件数が多い施設が断念した臓器の数を集計した。
JOTによると8月末現在、国内の待機患者は約1万6000人いる。
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