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御岳山の宿坊が125年ぶりリニューアル、ペンション風に…泊りがけの参拝減って少人数の利用増で

読売新聞 / 2024年9月29日 14時16分

ヒノキの香りが漂う「うつぼや荘」。靱矢さん(右)と妻の由美子さんが立つのは休憩所として利用できるテラス席(青梅市で)

御岳山 みたけさん (東京都青梅市)上にある宿坊のひとつ「うつぼや荘」が、約125年ぶりに全面的に建て替えられ、ペンション風の宿に生まれ変わった。山頂にある「武蔵御嶽神社」の信者集団などの団体客が減ったことを受け、新たな客層を取り込もうと、1日2組限定の「落ち着く宿」を目指した。主人の 靱矢 うつぼや正さん(66)は「御岳山に新しいお客を招くことで、活性化の一端を担えれば」と話す。(鈴木章功)

 御岳山の山上集落には現在、20軒余の宿坊があり、それぞれ同神社神職の「 御師 おし」たちが代々営んできた。靱矢さんも御師の一人で、うつぼや荘の15~16代目の主人だと伝わっている。

 靱矢さんによると、同神社は特に江戸中期以降、豊作や魔よけなどの神として信仰を集めた。御師らは各地の農家などを訪れては「 大口真神 おおくちまがみ」(おいぬ様)の札を配るなどしたことで信仰が広まり、村などに信者集団「御嶽講」がつくられた。その講の代表者たちが同神社に参拝(代参)する際に、宿坊での宿泊や神社への案内などの世話をしたのも御師だったという。

 だが、交通網の発達や農業の衰退による講の高齢化などに伴い、近年は泊まりがけの代参は減少。かつて盛んだった御岳山での林間学校や合宿も下火になり、宿坊を利用する団体客も減っていった。一方で、家族連れや訪日外国人客などの少人数の宿泊客が増加していたという。

 かつては靱矢さんの母親(92)と妻・由美子さん(64)が団体客の食事の支度などを切り盛りしてきたが、母親は3年ほど前に高齢者施設に入所。1900年に建てられてから増改築を重ねた元の宿坊は老朽化が進み、繁忙期のアルバイトの確保も難しくなったことから、靱矢さんは宿坊を建て替え、少人数限定の宿にすることを決めた。

 7月に完成した総ヒノキ造りの2階建て住宅兼用の新たな宿坊には、1階に 祈祷 きとう所と食堂を、2階に定員5人の和洋室と同2人の洋室を、それぞれ配置した。二つの客室は、節がほとんどないヒノキの木目で天井や床を覆い、落ち着いた空間を演出。食事には自家栽培の野菜や地元名物の刺し身こんにゃく、川魚の塩焼きなどの「御師料理」を提供する。

 宿泊客の料理を作る由美子さんは「御岳山の自然が育んだ旬の食材を使い、心を込めて作っているので、楽しんでもらえたらうれしい」と話し、靱矢さんも「1日2組までに受け入れを限定することで、アットホームなもてなしをしていきたい」と力を込める。

 庭に延びる新設のテラスにはテーブルを置き、登山客や参拝客の休憩所としてビールや軽食を提供している。靱矢さんは御岳山観光協会会長として山の魅力の発信にも努めており、「この地域の活性化のためにも、新たな客に訪れてもらえるようにしたい」と話す。

 宿泊料は1泊2食付きで1人2万5000円(税別)から。予約や問い合わせは、うつぼや荘(0428・78・8462)へ。

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