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遺体の引き揚げ、遺留品の捜索…神奈川県警の水中活動専門「スキューバ隊」が向き合う悲しみ

読売新聞 / 2024年10月1日 18時12分

視界が利かない水中を想定し、ロープを持って離ればなれにならないよう注意しながら訓練する隊員(横浜市金沢区で)

 神奈川県警は今年、創立150周年を迎えた。1万5000人を超える警察官が日々、県民の命や安全を守っている。その仕事は、パトロールや交通取り締まりなど、人目に触れやすいものばかりではない。専門性の高い任務に励む部隊の一つが機動隊だ。(中山知香)

 海や川など水辺での救助活動といえば、映画「海猿」で有名になった海上保安庁の「特殊救難隊」を思い浮かべる人が多いだろう。機動隊にも水中で活動する「スキューバ隊」という組織がある。20~30歳代の若い隊員を中心に、水泳経験者約60人で編成されている。活動のメインは行方不明者や事件に関連する凶器など、遺留品の捜索。悲しみに向き合うことが多い。

 6年目を迎える桜井章文巡査部長(32)は、入隊直後の2019年の夏が心に残っている。県北西部の宮ヶ瀬湖で早朝から行方不明者を捜索した。視界がほぼ利かない中、約2時間かかって遺体を引き揚げた。現場で捜索活動を見守っていた遺族からは「心の整理がつきます」と、泣きながら感謝された。

 救助や捜索のためには、自分一人で泳ぐときと比べて3倍の泳力が必要とされる。隊員には高い水泳の技術に加え、水中での不測の事態に冷静に対応できる能力が求められる。

 3年目の奥友勇人巡査(28)は長年の野球経験やダイビングのライセンスを持ち、入隊前はある程度「やれる」自信があった。しかし、「求められる体力や精神力のレベルは全く違っていた」。

 昨年7月、横浜市の新田間川で初現場に臨んだ。川底に足を着けると砂が巻き上がるため、体を浮かせ、手探りで窃盗事件の被害品である財布を捜した。ヘドロにまみれて隣の隊員も見えず恐怖を感じたが、「見つかれば事件解決につながる」と気持ちを奮い立たせた。無事に仲間が財布に入っていた保険証を発見し、事件の解決につながった。

 隊員らは毎年夏、3週間ほど平日午前9時~午後5時、昼の休憩時以外は水中で過ごす訓練を行う。マスクを外すなど妨害を受けながらの潜水、手を使わずに長時間の立ち泳ぎ、目隠しをしたままのメニューも。訓練の過酷さに泣き出す隊員もいるといい、活動の裏には血のにじむような努力がある。

 スキューバ隊には2人の女性隊員がいるが、男女の訓練メニューは同じだ。今春入隊した黒岩怜香巡査(25)は必死に食らいつき、7月末の初級試験に合格した。現場デビューはまだだが、「女性の要救助者への対応など、役立てる場面があると思う」と意気込む。

 隊を率いる宇都宮哲哉警部(50)は「自分たちにしかできない特殊な技術を生かし、仕事をしているという誇りを持っている」と語り、こう願う。「救助や捜索の背景には、何時間もの訓練がある。水中のプロフェッショナルとして活動する部隊が県警にあることを知ってもらえたら」

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