東海道新幹線の開業から電力供給を支えてきた「FC」引退へ…ヘルツを50から60に変換
読売新聞 / 2024年9月30日 13時39分
10月1日に開業60年を迎える東海道新幹線の開業当初から、電力供給を支えてきた回転型の周波数変換装置(FC)が、2027年度に引退することが決まった。国内には東西で2種類の電気がある中、FCは東西両地域を貫く東海道新幹線には欠かせない存在。JR東海は今後、環境に配慮した静止型FCへの転換を進めていく。(竹田迅岐)
「ゴー、ゴー、ゴー」。8月中旬、神奈川県南足柄市にあるJR東海の西相模周波数変換変電所内に、爆音が響き渡っていた。同変電所では、電力会社から供給された周波数50ヘルツの電気を東海道新幹線用の60ヘルツに変えている。
その一角で、横10メートル、奥行き25メートル、高さ5メートルという巨大な回転型FCがせわしなく稼働していた。装置側面の銘板に刻まれているのは「製造年1963」の文字。開業時から働き続け、現存する唯一のFCだ。
JR東海東京統括電気所電力技術科長の月田正和さん(60)は「東海道新幹線の東京から静岡・三島地区の電源元である回転型FCは、東海道新幹線にとって最重要設備です」と力を込める。
国内で使われる電気の周波数は、静岡県などを流れる富士川を境に、電力会社ごとに西側は60ヘルツ、東側は50ヘルツと異なる。東海道新幹線は1964年に東京―新大阪間で開業。区間はその後、博多まで延伸する構想があったため、西側の60ヘルツを採用し、富士川より東の区間では、FCを使って50ヘルツを60ヘルツに変電して新幹線を走らせている。
東海道新幹線の乗客数は開業後、日本の高度経済成長や70年の大阪万博開催に向けて大幅に増えることが見込まれ、車両数は12両編成を16両編成に、さらに運行本数も増やした。FCは、こうした時代の要請に応える形で7台まで増えた。
ただ、2004年には技術革新により、環境負荷の低い静止型FCの導入が始まった。JR東海電力課担当課長の中野勝康さん(45)は「静止型FCは二酸化炭素の排出が少なく、保守もしやすい」と語る。
そして、回転型FCは徐々に姿を減らすことに。開業から使われていた回転型FC2台のうち、横浜市内の1台は、22年に役目を終えた。残る南足柄市の1台は部品交換しながら稼働を続けてきたが、27年度に静止型FCに切り替えることが決まった。
月田さんは「開業時から働いてくれた回転型FCがなくなってしまうのは寂しい限り。最後まで仲間と共にしっかりメンテナンスしていきたい」と語った。
◆FC=Frequency Converterの略
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