大学院を修了したサッカー元日本代表・福西崇史、「らしい」修論テーマは…「サッカー観戦のリテラシー上げたい」
読売新聞 / 2024年10月1日 10時0分
サッカー元日本代表でサッカー解説者の福西崇史さんが、読売新聞ポッドキャスト「ピッチサイド 日本サッカーここだけの話」に出演した。サッカーの「英才教育」ではなかったという福西さんは、どのようなスポーツ遍歴をたどってきたのだろうか。さらに現役引退後は、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に進学し、昨年修了した。番組MCの元日本代表・槙野智章さんが聞いた。
器械体操からサッカー
福西さんは瀬戸内海に面する工業都市、愛媛県新居浜市の出身。愛媛は済美や松山商業といった高校野球の強豪校が多く、野球好きとして知られた松山市出身の俳人・正岡子規の存在もあり、野球が盛んなイメージで知られる。
近年はサッカー熱も高い。Jリーグでは、徳島ヴォルティスや愛媛FC、カマタマーレ讃岐、FC今治が戦っており、地元選手も多く活躍している。
福西さんがサッカーを始めたのは小学4年の頃。当時まだJリーグは誕生していない。兄弟の影響で器械体操をしていたが、友人がサッカースクールに通い始めたことをきっかけに、一緒にサッカーを始めたという。
「幼稚園から器械体操をやっていて運動能力が高かったから(サッカーは)そこそこできた。すぐに活躍できたんで、調子には乗ってたよね」
愛媛では小学生の福西さんの名前はとどろいていた?
「新居浜だけね(笑)」
プロサッカー選手の夢?「ないない」
中学生で愛媛の選抜チームに呼ばれたが、「まだサッカーをメインにやっていく感じではなかった。上を目指すより、みんなで遊び感覚でやっていた」と言う。
器械体操で鍛えた身体能力こそ高かったものの、サッカーのテクニックは周囲と比べて見劣りしたという。
「やっぱり自分は下手くそやったよ。県選抜では試合に出られないし、それまで自分は『うまい』と思っていたけど、実際はうまくなかった。現実を知った時に『うわ、練習しなきゃ』って初めて思った」
Jリーグが誕生したのは高校生になってから。サッカー選手になる夢は「ないない。だってJリーグもなかったし、地元でサッカーで大活躍してる人も聞いたことがなかった」。サッカーをするモチベーションは、純粋に仲間たちとのサッカーが楽しくて、好きだったことだ。
サッカーに生きた体操経験
体操はマット運動から始まって、成長に合わせて器械体操をするようになった。
「(鉄棒の)大車輪もやったし、『トカチェフ』ぐらいまではいったかな」
体操で培われた体幹やバランス感覚はサッカーにも生きた。
「守備というか接触プレー。バランスとか、よろけた体を戻すとか。倒れるときの体の使い方や相手のバランスの崩し方。そういうのはとても役に立った」
「ベースは器械体操。うちの子どもにも体操をさせたし、みんなにも体操はすすめている」
一方で、サッカーを始めたのは小学4年で、決して早くない。
「結局さ、『やらされてる』と『やってる』は違う。もちろん、親からしたら(何かスポーツを)やってほしい。サッカーをずっとやっていくのなら、(サッカーだけをさせる)英才教育をした方が、サッカーの能力は上がるとは思う」
福西さんは、子どものスポーツ競技力の向上について「英才教育」の効果は認めつつも、次のような指摘をした。
「個人競技と団体競技は違う。個人競技だったら英才教育の方がいいのだろうけど、団体競技って『適材適所』。なので、僕はいろいろやっていいと思う。競技をひとつに絞るタイミングで、得意なことを生かせばいい」
体操での経験がサッカーに生かされ、日本代表選手にまでなれた。
早稲田大学大学院を修了
福西さんは2022年に早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に進学し、翌年に修了した。元日本代表GKの川口能活さん、ラグビー元日本代表の五郎丸歩さん、タレントの恵俊彰さんらと「同級生」として学び、修士論文のテーマは「得点の起点となったプレーを伝えるサッカー中継」。
「サッカー界の外の世界を知りたかった。大学院で自分の知らないことを知るのもいいんじゃないかと」
論文のテーマは、ゴールやその直前のアシストプレーよりさらに前、「得点の起点になるプレー」をサッカー解説者としてどのように伝えるか。テレビ局のサッカー中継の担当者からも聞き取りをして、論文をまとめた。
サッカー解説者として「起点のプレー」を意識しながら語るのはもちろん、視聴者に伝えたい内容を具体的に言語化できるようになったことで、テレビ中継のスタッフとのコミュニケーションがよりスムーズになったという。
「(得点の前の)駆け引きが分かってくると、サッカーが奥深く面白くなる。サッカー観戦の『リテラシー』が上がる。そういう人を増やしたい」
サッカー解説者として参加した2014年のW杯ブラジル大会で目にした光景が強く印象に残っている。「街なかのおじいちゃん、おばあちゃんがめっちゃけんかしてんだよ。サッカーの戦術の議論してんだよ。すげぇなと思って。日韓W杯であれだけ日本が盛り上がれるってことは、(日本にも)ポテンシャルはある。それをもう1回、あれをもう1回、日本でやりたいんだよ」
プロフィル
福西崇史(ふくにし・たかし)
サッカー解説者。高校を卒業後、Jリーグ加盟2年目のジュビロ磐田に入団。ハンス・オフト監督(当時)にボランチへのコンバートを勧められ、同じ年に入団したブラジル代表キャプテンの「鬼軍曹」ドゥンガとプレー。日本代表ではW杯の日韓大会、ドイツ大会に出場。2022年に早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に進み、翌年大学院を修了した。1976年生まれ。愛媛県出身。
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