オーストリア総選挙で極右野党が第1党、元ナチス関係者らが結党…欧州政治の右傾化が鮮明に
読売新聞 / 2024年9月30日 19時20分
【ウィーン=中西賢司】オーストリアで29日、国民議会(下院、任期5年)の総選挙が行われ、反移民などを訴えた極右野党・自由党が1956年の結党以来、初めて第1党となった。単独過半数には届かず、政権奪取の成否は今後の連立交渉次第となる。自由党の勝利は、欧州政治の右傾化傾向を改めて鮮明にした。
内務省発表の暫定結果では、自由党の得票率は過去最高の29・2%(獲得議席58)で、現与党の中道右派・国民党は26・5%(同52)、野党の中道左派・社会民主党(同41)は21・0%だった。自由党のヘルベルト・キクル党首は投票終了後の党首討論で「史上最高の結果に導いてくれた勇気に心から感謝したい」と述べた。
大統領が慣例通り第1党に組閣を要請すれば、国民党が連立に応じるかどうかが焦点となる。国民党党首のカール・ネハンマー首相はキクル氏が指導する自由党との連携を否定するものの、キクル氏が首相など中枢ポストに就かなければ協力を排除していないとの見方がある。国民党は過去にも自党主導で自由党と連立を組んでいる。一方、国民党は社民党と組めば過半数に達するが政策の隔たりは大きく、「野合」批判でいっそうの政治不信を招きかねない。
自由党は元ナチス関係者らが結党した政党で、「オーストリア第一」を掲げ、移民・難民対策や新型コロナのワクチン接種義務化など、この5年の国民党政権の政策を批判し、支持を広げた。欧州連合(EU)の対ロシア制裁にも反対しており、自由党が政権を主導することになれば、EUのウクライナ支援にも影響しそうだ。
不法移民の国外追放やメディア規制などを唱える自由党の伸長は右傾化する欧州の現状を浮き彫りにした。ドイツ・ジーゲン大学のフィリップ・マーノ教授は「右派政党が支持を集めるのは移民問題が重要な要因だ」と指摘する。
難民や移民として受け入れる外国人が増え続け、学校などの現場が
マーノ教授は「移民問題で顕著な改善がみられなければ、来年のドイツ総選挙などでも争点となり、右派の躍進につながるだろう。右派台頭は欧州統合を弱める遠心力としても働くことになる」と分析する。
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