活況を呈するミドルシニアの「転職」 「なりたい自分」に近づくため必要なことは/リクルートエージェント キャリアドバイザー・大石真弓さん
J-CASTニュース / 2024年9月30日 18時10分
リクルートエージェント キャリアアドバイザー・大石真弓さん
転職市場が活況だ。
リクルートの「転職市場動向レポート」(2024年度上半期)によると、近年、キャリア採用が活発化。従来は20~30代を中心に採用してきた業界や企業が、40代~50代以上のミドルシニアを採用する事例が増えているという。
とはいえ、この世代にとって転職はまだまだ高いハードル。勇気が湧かずに足踏みしている人も少なくない。そんな時、企業と求職者をつなぎ、転職のサポートをしてくれる転職エージェントの存在は心強いだろう。リクルートエージェントのキャリアアドバイザー・大石真弓さんに、最近の転職事情や転職エージェントの活用法を聞いた。
確固たる経験やポータブルスキルが強みに
――まず、近年、活発化している転職市場の特長をお聞かせください。
大石真弓さん これまでは年収を上げたい、大きな会社に行きたいなど、わかりやすい理由での転職が一般的でした。最近はそういった理由のほかにも、コロナ禍の影響からか、実りある人生を送るにはどうすべきかといった視点で、新たな仕事を求める人が増えているように思います。若手からミドル、シニアまで年代に関係なく働き方が多様になり、仕事に対する価値観が変わってきたからでしょう。
――こうした価値観の変化を企業側はどう受け止めているのでしょうか。
大石真弓さん 企業側も変わろうとしているように感じます。たとえば、従来は求職者が残業時間をダイレクトに質問するのはあまり好ましくないとされてきましたが、今は逆に多くの企業が積極的に情報を開示していて、多様な働き方を認めようとしています。社員がやりがいを持って力を発揮するにはどうすべきかといった視点に立ち、制度を整える企業が増えているのではないでしょうか。
――ミドルシニア世代の転職も増えている?
大石真弓さん ミドルシニア世代は求められていて、実際に私がご支援した転職者も増えています。かつて転職市場には「35歳の壁」があり、「転職するなら35歳までに」と言われたものですが、それはすでに変わってきていると感じます。
――転職に年齢は関係ない、と?
大石真弓さん もちろん若手には幅広く挑戦できる魅力があり、ミドルシニア世代には確固たる経験があります。専門スキルやポータブルスキル(職種の専門性以外に、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキル)があります。懐の深さ、人生の豊かさといった魅力はなにものにも代えがたいものです。
また、これまでの経験やスキルを詳細に伝えれば、次の会社ではどんな即戦力になり得るかをリアルに見せることができます。ミドルシニア世代の場合、活躍イメージが持てれば安心して採用できるのだと思います。
――ミドルシニア世代には、どういう人材が求められているのでしょうか。
大石真弓さん 専門スキルやマネージメントスキルに長けている方、また、ポータブルスキルも強みになります。
社会人経験が長いミドルシニア世代は、一社における就業経験も長く、企業の創業期や拡大期といったビジネスフェーズに関わった経験のある方も少なくありません。そうした機会にどう関わり、どう取り組んだかはとても重要。そこで培ったスキルは大きな強みです。
――ミドルシニア世代は何を求めて転職を考える方が多いのでしょうか。
大石真弓さん 実は最近、これまでしっかりと仕事に取り組みキャリアを積んでこられた方に多いと感じているのが、「自分には何かが足りない」「もっと何かあればいいのに」といった悩みです。
自分の強みを考える以前に、「何かが足りない」と感じてしまうのはなぜなのか、何が足りないのかを知りたい――。そういう方が増えている気がします。
――そういう方にはどうアプローチされるのですか?
大石真弓さん 「もっと何かある」と思った理由を深掘りしていきます。でも、私はまず、そう思ったこと自体が素晴らしいことだとお伝えします。ある意味、立ち止まる余裕ができ、「こうありたい姿」「もっと楽しいこと」に気づくチャンスが訪れたということだからです。
キャリアもあって、年収にもあまり不満はない。それでも「何かが足りない」と気づき、変わりたい、成長したいと思うわけですから、その前向きな姿勢が素晴らしいと思うのです。
求職者の「絶対的味方」として存在する転職エージェント
――これまでの働き方や経験、能力など自身のキャリアをとことん見つめ直し、強みを見つける作業が不可欠のように思います。難しいですね(笑)。
大石真弓さん おっしゃる通り、転職活動において、「キャリアの棚卸し」はとても大切です。とはいえ、自分で分析するのは難しい作業なのかと。
――そのとき頼りになるのが、転職エージェントですね。
大石真弓さん 転職エージェントを活用するメリットは2つあると思います。その1つが、「キャリアの棚卸し」を通し、どんな強みを持っているのかを客観的にとらえる作業ができることです。
――具体的にはどのように進めていくのでしょうか。
大石真弓さん みなさん、素晴らしいキャリアをお持ちなのに、「専門スキルはないです」「強みはないです」とお話される方がとても多い。一生懸命やってきたことが自分にとっては当たり前過ぎて、どれだけすごいことなのかを客観的に捉えられていないのだと思います。
ですから、まずは日常の仕事の悩みや楽しかったこと、夢中で取り組んだことをうかがいながら、その方が仕事にどう関わり、どんなスキルを磨いていったのかを探っていきます。
印象に残ったお仕事を2つ、3つうかがうと、必ず共通点があって、その方の強みや価値観、「らしさ」が見えてきます。そこを客観的に抽出し、「実はこんな強みがあるじゃないですか」と気づきのご提案をさせていただきます。
一人では気づけなかったことを一緒に紐解いていく――。それがエージェントの役割であり、強み、そして利用するメリットではないでしょうか。
――2つ目のメリットはなんでしょうか。
大石真弓さん 「絶対的な味方を持てる」ことです。
ミドルシニアの方は、今の会社で一定量の経験があり、仕事に対する自信もお持ちです。でも、世の中でどれくらい通用するのか、自分の市場価値について、不安を抱えている方が多い印象を受けます。
転職活動中も、すべてうまくいくとは限りません。面接で思うような話ができなかったり、合格が得られなかったりすれば落胆します。
そんなとき、「絶対的味方」として本音をぶつけられる存在がエージェントのキャリアアドバイザーです。悩みや悲しみを共有し、励まし、次に何をすればいいのか、どうするとよくなるのか、ともに進むための「専用の作戦」を練っていくのです。これも「絶対的な味方」ゆえに練ることができるものだと自負しています。
――エージェントに登録すると、転職先を見つけやすいのでしょうか?
大石真弓さん そうですね。ネットには膨大な情報があふれていますし、不確かなものも少なくありません。仕事をしながら、必要な情報を精査するのは大変な作業です。エージェントを使えば、自分にとって大事な情報やアドバイスがもらえるので、転職活動にも集中できると思います。
また、非公開求人のご提案もできます。それだけでなく、志望業界の動向や求人企業の風土、また面接を終えた求職者に聞いた面接官の雰囲気など、最新の情報をお伝えできます。
――ほかにはどんなサポートがありますか? そして、料金は?
大石真弓さん 具体的な職務経歴書の書き方や、面接での答え方などのアドバイスのほか、本人に代って面接や入社日の日程調整、また、諸条件の交渉も行ないます。
サービスはすべて無料です。
応募書類には、ご推薦させていただく方のキャリアの強みやポータブルスキル、お人柄など、「ぜひお伝えしたいこと」をご紹介状に書かせていただきます。
「何かが足りない」と思ったときが相談のタイミング
――実に心強い存在ですね。転職への気持ちがまだ決まらないうちから、相談できるのでしょうか。
大石真弓さん もちろんです。「何かが足りない」「もっと何かある」と思ったときが、ご相談いただく絶好のタイミングです。実は転職を決意して相談する方のほうが稀で、「何となくモヤモヤしていたので申し込みました」という方ばかりです。
――それは意外ですね。
大石真弓さん 利用の流れとしては、まずネットからご登録いただき、サービス内容や求人情報を電話やメールでお伝えした後、キャリアドバイザーとの面談を行ないます。
面談までに何か考えておくことはありませんし、転職を決めておく必要もありません。面談時にも、「転職するかしないかは、最後にお客様ご自身の意思で決めていただくので、今は何も決めないでください」とお伝えしています。
――最後に、モヤモヤしながらも前に踏み出せないでいるミドルシニアへのアドバイスをお願いします。
大石真弓さん 転職活動と聞くと、まず会社を辞めることが頭に浮かび、ネガティブなイメージを持つ方が多いと思います。
でも、転職活動はネガティブな行為ではありません。
モヤモヤしている自分を見つめ直し、こうなりたいという正直な気持ちや、成長したいというこの欲求をどうやって満たすか――。それを探す作業が転職活動だと思います。
活動中にさまざまな企業と接点を持つことで、今の会社に対して新たな見方が生まれ、会社に残る選択もあり得るでしょう。逆に、「なりたい自分」がもっとほかにあると気づけば、転職を決意できます。新しい扉を開くことができます。
どちらにしても大きな前進です。
何もせずにモヤモヤしたまま、あと10年、20年を我慢して過ごすのは、実にもったいない。転職は、「今の会社を辞めること」が目的ではなく、「なりたい自分に近づく」ための一歩だと考え、前向きにとらえていただければと思います。
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