「阪神と巨人の違い」テーマに異例ミーティング…岡本和真の本塁突入に結実
読売新聞 / 2024年10月3日 5時30分
G復権 慎時代<4>
優勝を目前に、阿部監督をうならせたプレーがある。
9月26日、DeNA戦の二回二死一、三塁。39歳の一塁走者・長野がスタートを切ると、三塁走者の岡本和は捕手から二塁への送球が浮いたのを瞬間的に察知して本塁へ突入。頭からすべり込んだ。見事な重盗はノーサインだった。「一番、成長を感じた」と阿部監督。今季、目指してきた姿勢が凝縮されていた。
チーム作りが本格化する2月、選手やスタッフに小冊子が配られた。阿部監督の考えが明文化され、「監督方針」の冒頭には、その信念が記されていた。
<勝利のために自己犠牲ができる選手を起用する>
2年連続の4位に沈んだ昨季、一軍コーチとして不可解な現実に直面した。チーム打率はリーグ1位。本塁打も12球団トップの164本と量産したが、得点はリーグ3位にとどまった。「取れる点を取れなかった」。その教訓が出発点になった。
一発頼みのチームを変えるため、「泥臭く1点をもぎ取る」と強いメッセージを打ち出した。指揮官の方針を球団も後押し。選手の査定を見直し、進塁への意識や自己犠牲を伴うプレーの評価ポイントを高めた。攻撃面では四死球や進塁打、好走塁のほか、追い込まれた後の粘りなども含まれる。
春季キャンプでは「阪神と巨人の違い」をテーマにした異例のミーティングを開催。その場でスコアラーが一目瞭然のデータを示した。単打で走者が一塁から三塁へ進んだり、二塁から本塁へ生還したりする確率が極端に低く、走塁が得点に絡んだことを示す数値が12球団ワーストだったのだ。1位は阪神だった。
この差を縮めるため、チーム打撃や走塁に特化した練習メニューを実施。「暴走族を作る」との表現で積極的な走塁を奨励し、実戦が始まると犠打や進塁打のサインを徹底した。開幕後も、打席での工夫や必死さが見えなければ容赦なく二軍の選手と入れ替えた。
ぶれない方針はチームに浸透し、勝負の9月に次々と結実していく。12日の広島戦。三回無死二塁、門脇がセーフティー気味のバントを転がした。これが床田の一塁悪送球を誘い、浅野が二塁から生還。この先取点で主導権を握り、敵地での3連勝につながった。
今季は本塁打による得点率が低い代わりに、束となって攻めるプレーが増えた。「今は上回っていると思う」と、阿部監督は特に走塁面で阪神に勝ったという手応えがある。昨季12試合も負け越した阪神戦で今季は五分に持ち直し、1勝7敗だった1点差試合では7勝2敗と逆転した。大混戦を抜け出した背景に、1点をもぎ取る攻撃があった。
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