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JALとANAが呉越同舟、福岡空港の増便対策の切り札に…「グラハン」車両を共同使用

読売新聞 / 2024年10月3日 15時30分

 2本目の滑走路の供用開始が来年3月に迫っている福岡空港(福岡市博多区)では、増便に向けた航空機の受け入れ業務の対策が急務となっている。その切り札の一つが、手荷物の積み下ろしなどを行う地上業務「グランドハンドリング(グラハン)」の車両の共同使用だ。日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)が運用を本格化させ、業務効率化を進めている。両社による共同使用は全国の空港で唯一だ。(饒波あゆみ)

手荷物を運搬

 福岡空港の国内線の駐機場で9月、JALのスタッフが、ベルトコンベヤー付きの車両「ベルトローダー」を使って、乗客の手荷物を降ろしていた。車両にはANAのロゴが入っている。作業を終えると、駐機場周辺に新設された置き場に車両を戻していた。

 グラハンを担うJAL福岡空港支店の河野宏之さん(42)は「ベルトローダーの移動時間が短縮され、車両を効率的に使えるようになった」と話す。

 福岡空港で共用化を進める背景には、特有の事情がある。アジア各地からの玄関口で国内便も多い福岡空港は、国内有数の混雑空港となっている。一方、敷地(約346ヘクタール)が狭く、市街地にあり拡張も難しいため、約2000台に上るグラハン車両の置き場は満杯状態となっている。

 さらに、同空港は羽田空港(約1515ヘクタール)などとは違い、両社の航空機が同じ駐機場を使う。このため、グラハンでも同じような車両を使用するのに、離れた置き場から自社の車両をそれぞれ移動させていた。往復約2キロを移動することもあったという。

 2023年度の航空機の発着回数は約17万9000回(回転翼機除く)で、滑走路が増設されると、「滑走路処理能力」は最大で年間21万1000回まで増やせる。そのため、車両の効率的な運用が必要となった。

スタッフ負担減

 そこで空港運営会社「福岡国際空港(FIAC)」を中心に、航空会社、グラハン事業者などは21年度から年数回に分けて共用化の試験を実施してきた。現在はJALとANAが本格運用に乗り出し、ベルトローダーと航空機牽引けんいん車を計12台出し合って、FIACが設けた駐機場そばの置き場に止めて共用している。

 グラハン用の車両は、保有する航空会社によってメーカーや仕様が異なる場合があるが、この2車種は両社とも同じメーカーを使用しており、スイッチやレバーの位置も違いがなかったため、共用に向いていたという。

 JAL福岡空港支店の河野さんは「移動に伴う事故のリスクやスタッフの負担も軽減できる」と共用の効果を語る。ANA福岡空港の時津秀喜さん(40)は「駐機場近くに止められるようになったので、空いた置き場の有効活用もできる。今後も共用化の可能性を検討していきたい」と話す。

 さらに、国際線を就航させている航空会社なども、ベルトローダー共用に向けて検討を進めている。

 FIACは、共用化により車両の移動距離が短縮されて、二酸化炭素の排出量削減につながることから、脱炭素化にも役立つとしている。FIACの保田雄樹・増設滑走路供用準備課長(44)は「さらなる効率化を進め、将来的には車両台数や駐車スペースの削減につなげたい」と話している。

作業資格の共通化も

 各地の空港では、グラハン業務の人手不足に対応するため、作業資格の共通化が進んでいる。

 鹿児島空港や高知空港、仙台空港など10空港では、JALとANAが作業資格の共通化を始めた。人材の適正配置や業務効率化につなげるのが狙いだ。

 これらの10空港では、両社が同じグラハン事業者に委託しているが、同じ業務でも航空会社ごとの作業資格が必要だった。今年4月からは機体の誘導や牽引、荷物の積み下ろしなど七つの資格について、1社の資格があれば、もう一方の資格は差異部分の確認や座学だけで取得できるようにした。この相互承認により、資格の取得期間が大幅に短縮できるという。両社は相互承認する資格の拡充も検討している。

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