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動画の「倍速視聴」10代7割、シニア5割...それで映画・音楽を楽しめる? 「納得できない」ベテラン記者、調査担当者に聞く

J-CASTニュース / 2024年10月3日 19時35分

動画の「倍速視聴」10代7割、シニア5割...それで映画・音楽を楽しめる? 「納得できない」ベテラン記者、調査担当者に聞く

スマホで倍速視聴を楽しむ(写真はイメージ)

映画やドラマ、音楽、ネット配信動画などを倍速で見る人がこれほど多いとは!

NTTドコモのモバイル社会研究所(東京都千代田区)が2024年9月24日に発表した「若年層ほど『倍速視聴することがある』10代男女で約7割」によると、10代男女で約7割、60代・70代シニア男性でも5割近くが倍速で動画を見ている。

74歳のJ‐CASTニュースBiz編集部記者は、どうにも納得できない。早回しで見たら、動画の良さが失われてしまうではないか。調査担当者に話を聞いた。

学校の先生の7割が「倍速視聴」をしている!

倍速視聴とは、テレビや映画、ネット配信などの動画を、速度を変えて再生(視聴)すること。

倍速といっても単に2倍にするのではなく、1.2倍や1.5倍など好みの速度で視聴する場合に使われる。速度を上げるだけでなく、0.75倍や0.5倍などに下げる場合も倍速視聴と呼ぶ。

モバイル社会研究所の調査(2024年2月)は、全国の15歳~79歳の男女5719人が対象。

まず、「倍速視聴をすることがあるか」と聞くと、全体では5割強の人が「ある」と答えた。

性年代別で見ると、若い層ほど多く、10代男女・20代女性は約7割、20代男性・30代男女・40代男性は約6割が「ある」と答えた。シニア層でも4~5割が倍速視聴をしている【図表1】。

職業別に聞くと、学生と教職員が最も多く約7割に達した。公務員、会社員で約6割【図表2】。

続けて、動画でよく見ているコンテンツごとに聞くと、「ゲーム」「教養・学習・自己研鑽」「アニメ」をよく見ている人が6割を超えた。ただし、これは「ゲーム」を見る時に倍速視聴しているかどうかを調査したわけではなく、普段ゲームをよく見る人が、倍速視聴をよくしているかを聞いている点が要注意だ【図表3】。

また、シーン別で動画を見ている人に倍速視聴しているかを聞いたのが【図表4】だ。「通勤・通学・外出の移動時」が7割以上、「夜寝る前に布団の中で」も6割を超えた。これも、「通勤・通学・外出の移動時」に倍速視聴しているかどうかを調査しているわけではない点が要注意だ。

シニアでも、家事など忙しい時「タイパ」で倍速視聴をする

J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当したモバイル社会研究所の佐藤仁(ひとし)さんに話を聞いた。

――まずは基本的なことをお聞きしたいと思いますが、74歳の私は倍速視聴というものをしたことがありません。ただ、録画したドラマがかったるいときは、先送りボタンを押して「途中を飛ばす」ことはよくあります。今回の調査において、そういうことも「倍速視聴」に入るのでしょうか。

佐藤仁さん 「途中を飛ばして」視聴していないのであれば、タイムパフォーマンス優先という意味では類似した行動かとは思いますが、私たちの調査では、「途中を飛ばす」ことは倍速視聴に含んでおりません。

――若い人ほど倍速視聴が多いのは、今おっしゃったZ世代に多いといわれる「タイパ」(タイムパフォーマンス)重視の影響でしょうか。それにしても、私と同年代の70代シニア男性でも5割近くいることが実は驚きです。

佐藤仁さん ご指摘の通り、若い世代はタイムパフォーマンスを重視していると言われています。

「自分の見たいものを、短時間で効率的に(たくさん)見る」ための手段として、倍速視聴をしているのだと思います。YouTubeや多くの動画配信が倍速視聴に対応しており、若い世代ほど、スマホなどのICT機器を使いこなしていることは要因の1つかと思います。

また、本調査ではスマホなどのインターネットでの動画視聴だけでなく、テレビ視聴時の倍速視聴も含まれています。そのためシニア世代でも録画したテレビ番組などを倍速視聴して見られる方が一定数いるのだと思います。

また、シニアの方も一定数、家事などご多忙の合間でテレビ番組やスマホで動画を見ているのでタイムパフォーマンスを意識して倍速視聴されている方がいらっしゃるのだと思います。

音楽を倍速で聴いたら、「キャンキャン」した感じにならないか?

――職業別に調査した結果が興味深いです。若い学生が多いことは理解できますが、教職員が同じくらい突出して多いのはなぜでしょうか。

佐藤仁さん 「教養・学習・自己研鑽」をよく見る人が倍速視聴をする傾向があるとの結果も出ています。教員の方は授業準備やご自身での学習のために、倍速視聴で確認しているのかもしれません。

――「教養・学習・自己研鑽」や「アニメ」「ゲーム」などを見る人が倍速視聴をするのはなんとなくわかりますが、「音楽」や「映画」を見る時に倍速視聴するということが理解できません。

たとえば、クラシック音楽を1.5倍~2倍の速さで聴いたら、キャンキャンした感じになるでしょう? 映画だって、しんみりしたセリフが漫画っぽくなりませんか。音楽や映画じゃなくなると思いますが。スポーツもドタバタになってしまいます。

佐藤仁さん 音楽番組は、音楽以外の部分(解説者の解説など)を倍速視聴して、音楽の部分は倍速しないで視聴している、など使い分けているのかもしれません。また、映画やスポーツなどでは録画した番組を倍速視聴して「見たいシーンだけを通常再生」していることもあるかもしれません。

脳の疲労を避けるためにも「夜寝る前は見ない」などマイルールを

――倍速視聴に関しては、精神科医や脳科学者から「映像が脳にどっと流入するため、脳が情報処理に追いつかなくなり、疲労する」と警鐘を鳴らす意見も出ています。

夜寝る前に動画視聴するという人が6割以上います。心配はないのでしょうか。「脳の疲労」を防ぐ方法があれば、アドバイスをお願いします。」

佐藤仁さん 倍速視聴と脳の疲労との関係は人によって異なると思いますが、睡眠への悪影響を避けるために「夜寝る前には動画を見ない。テレビを見ない」「夜に布団の中でスマホが気になってもチェックしないで寝る」といった自分だけの「マイルール」を作ってみるのがよいと思います。

YouTubeなどでは毎日のように大量に新しい動画が掲載されており、動画の数が多くなってきています。そのため今後も、倍速視聴をして動画を見る人は多くなっていくと想定されます。引き続き倍速視聴について調査していきたいと考えています。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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