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「国立大の教員職が買える」コンサル役員の言葉信じ340万円振り込んだが採用頓挫、女性「浅はかだった」

読売新聞 / 2024年10月4日 7時51分

琉球大学

 「国立大学の教員職がカネで買える」。琉球大学の非常勤講師職を巡る仲介疑惑で、講師候補者の1人はコンサルティング会社役員からそう言われて多額の金銭を支払い、50歳代教授から「講師発令の手続きに入る」と伝えられていた。読売新聞が入手した資料や関係者の証言からは、講師職の「売買」が疑われるやりとりの詳細が浮かび上がった。

340万円支払い

 「琉球大教授の研究室と公開講座を共催しませんか」。関東地方の社団法人代表の女性が、共通の知人を通じて知り合った役員からそう勧誘されたのは、昨年10月頃のことだ。

 国立大の公開講座のゲスト講演者になれば、団体には良い宣伝になる――。そう感じた女性は、続く役員の説明に衝撃を受けた。「カネを払って公開講座をし、教授会の審査に通れば、非常勤講師は数百万円、客員教授は数千万円でなれる。一生その肩書が使える」

 女性は、「国立大の非常勤講師」というブランドにひかれ、役員に勧められるまま講座の共催と支払いを承諾。同月末頃、役員が用意した請求書の「ブランディングや広告コンサルの費用」との名目の通り、約340万円をコンサル会社の口座に振り込んだ。

「大学は調べない」

 役員は、東京都内のコンサル会社のほか、コーヒーショップやレストランを経営する会社でも取締役を務めていた。教授とは2年ほど前、沖縄県でのコーヒー栽培の普及に向けた活動を通じて交流するようになった。昨年からは、女性のほかにも少なくとも男性2人に公開講座の共催を呼びかけ、教授に紹介していた。

 昨年12月、役員はオンライン会議で女性を教授に引き合わせた。その後、「教授からの依頼」として略歴などを送るよう女性に求め、「大学が具体的に調べることはない。少しでも盛りたいので実績があれば何でも書いて」と付け加えた。

 その一方で、今年1月、自らが関係する別会社名義で150万円を同大に寄付。寄付にあたっては、所定の用紙にある「使途・目的」の記載欄に、教授が担当する分野の「研究教育の推進」などと記していた。

 女性の公開講座は3月上旬に同大で開催された。数時間後、教授から女性に送られたSNSのメッセージには、こう記載されていた。「○○(役員の実名)さん仲介で講師発令に向けた手続きに入ります」

 ところがその数日後、役員は女性に「教授会が通らない」と採用が頓挫したことを伝え、女性の提供資金の一部は寄付にあてたと説明した。「非常勤講師になれると信じてお金を支払ったのは、浅はかだった。反省している」。女性は周囲にそう語ったという。

「売買の疑い」

 同大によると、今回の公開講座は教授の裁量で開かれており、大学としてゲスト講演者の選定などは行っていないという。

 同大では、教授から一連の経緯について確認したほか、女性からも聞き取りを行った。同大幹部は「教員職が『売買』の対象にされていた疑いもある」と問題視している。

 教授は読売新聞の取材に対し、役員から複数のゲスト講演者を紹介されたことや、大学への寄付があったことを認めたが、講師職の「保証」や寄付の私的使用などは否定し、「(役員が)ブランディング料を(講演者側から)もらっているとは聞いていたものの、寄付との関係はわからない。(自身は)一切関与していない」と強調した。一方で、「結果的に悪徳ビジネスに使われていたとしたら、道義的な責任を感じる」とも語った。

 役員に対しては、質問状を送るなど複数回にわたり取材を申し込んだが、回答はなかった。

寄付集めの制度悪用か

 仲介疑惑について、琉球大の幹部は、「非常勤講師を含め、教員就任を目的とした寄付を受けることはありえない」と強調している。

 大学への寄付は教育、研究や社会貢献に活用する目的で行われる。最近では少子化や補助金の削減などを背景として、国立を含めた各大学が財源を確保するため、寄付集めに力を入れている。

 産学連携で企業・団体と寄付講座を開設し、講師の派遣を受けることもあるが、寄付講座の設置は学長が決定するため、教授の裁量で開く今回の公開講座とは性質が全く異なる。

 筑波大の金子元久特命教授(高等教育論)の話「国立大の教員採用には高い公正性が求められ、金銭の見返りに教員職を得ることなどあってはならない。大学は近年、産学連携による外部講師の積極導入や寄付集めを推進しているが、こうした潮流や寄付制度を悪用し、国立大の肩書や実績ではくをつけたいという心理につけ込んだビジネスの存在が疑われる事態だ」

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