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乗用車盗難の6割、「防止装置あり」なのに被害…ハンドル固定など複数対策が必要に

読売新聞 / 2024年10月4日 22時6分

 全国の住宅で2018~22年の5年間に盗まれた乗用車のうち、6割の約5200台は盗難防止装置が付いていたにもかかわらず被害に遭っていたことが、読売新聞のデータ分析でわかった。電子キーを用いた「イモビライザー」などによる対策が突破されている格好で、専門家は「ハンドルの固定など複数の対策を組み合わせる必要がある」と指摘する。(川畑仁志)

 全国の警察が公開している18~22年の「犯罪オープンデータ」を集計し、乗用車盗の発生状況を調べた。5年間で約2万600台の被害が確認され、約8700台は一戸建てやマンションといった住宅の駐車スペースなどから盗まれていた。そのうち60%の約5200台は盗難防止装置が付いていた。特殊な方法でエンジンを始動させる手口などが用いられたとみられる。

 警察庁によると、乗用車やトラックなどの自動車盗(未遂を含む)は03年に約6万4200件に達したが、官民で対策を進めた結果、20年以降は5000件台で推移し、認知件数は10分の1以下になった。

 しかし、近年は高級ミニバン「アルファード」やスポーツ用多目的車「ランドクルーザー」などの被害が目立つ。人気車種には、特定の電子キーの電波を感知しないとドアの解錠やエンジンの始動ができない「イモビライザー」などが搭載されているが、多くのケースで突破されていることが浮き彫りになった。

 さらに、ここ数年の特徴は、「住宅」の駐車スペースで被害に遭う割合が増え、コインパーキングなど「駐車場」での発生を上回っている点だ。

 18年に「駐車場」で盗まれた乗用車は約2600台で、「住宅」での被害(約1800台)より多かった。しかし、翌19年からは「住宅」での盗難が上回り、自宅での対策の重要性が増している。

 日本損害保険協会(東京)は「電子的な対策だけでは数分程度で突破されることがある。タイヤやハンドルをロックする物理的な装置も組み合わせ、盗む側に『時間と手間がかかる』と思わせる必要がある」と注意を呼びかけている。

未明の犯行 たった3分

 最も身近な自宅の駐車スペースから愛車が盗まれた被害者は「まさか自分が……」とやりきれない思いを語った。

 茨城県つくば市の新興住宅地。周囲が寝静まった3月8日午前1時頃、黒い服装の3人が車で乗り付けた。住宅の防犯カメラが人影をとらえており、駐車スペースに止めてあったトヨタの「レクサスLX570」に忍び寄り、わずか3分後には乗り去る姿が映っていた。

 この家に住む主婦(48)は、聞き慣れたエンジン音を耳にして起きた。玄関先に飛び出すと、無情にも速度を上げて遠ざかっていく愛車が見えた。追いかけることもできず110番するしかなかった。

 マイカーは昨年12月、約1000万円で購入したばかり。防犯対策のため鍵は電波を遮断するケースに入れて保管していた。鍵が発する微弱な電波を封じ、ドアの解錠やエンジンの始動に悪用されないようにするためだ。主婦は「自宅の駐車場から盗まれるなんて……。安心して眠れない」と話す。

 同じつくば市で建設業を営む男性(54)は2020年1月、「レクサスGS」を盗まれた。大事に乗っていたが、その日に限ってガレージには入れず、いつもは缶に入れて保管する鍵も玄関に置いたままだった。

 午前2時半頃、エンジン音を聞き、「やられた」と思った。車には全地球測位システム(GPS)で場所を特定する機能がある。メーカーが提供するサポートサービスに電話をした。しかし、すでに犯人が解除しており、対応できないと言われたという。

 「レクサスGSに乗っていましたか? 見つかったんです」。昨年12月、警視庁から連絡があった。交通事故を起こした車の部品を調べたところ、男性が使用していた車と一致したという。すでに売却されたとみられ、別の人物が所有者となっており、「返すことはできません」と言われた。

 男性は「スマートキーの電波を中継して盗まれたのだろう。まさか別の場所で走っているとは思わなかった」と悔しがった。(水戸支局 大井雅之)

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