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都カスハラ防止条例成立、正当なクレームとの線引きに課題…接客の現場は歓迎「従業員も客と同じ人間」

読売新聞 / 2024年10月5日 7時32分

 東京都議会で4日、カスタマーハラスメント(カスハラ)を禁じる全国初の条例が成立した。顧客の理不尽な要求に悩まされてきた接客現場からは歓迎の声があがるが、正当なクレームとカスハラの線引きは難しく、実効性をどう確保するか課題もある。

 「従業員もお客様と同じ人間。『カスハラはだめだ』という理解が広がるきっかけになってほしい」。ホテル「リステル新宿」(新宿区)の運営会社の鈴木裕久社長(64)は条例成立を喜ぶ。

 宿泊客に「髪の毛が1本落ちていた」と罵声を浴びせられたり、客室のテレビ裏のほこりを見つけて「SNSで拡散してやる」とすごまれたりして、従業員が何時間も謝罪させられることは少なくない。従業員を守るため、クレーム対応は複数人で当たるほか、やむなく客を「出入り禁止」にすることもあった。鈴木社長は「恐喝や脅迫など法に触れるものは警察に対応を任せるが、セクハラまがいの言動や強引な客室変更の要求など犯罪行為に当たらないケースもあり、対応に苦慮してきた。条例成立を機にカスハラが根絶してほしい」と話す。

 流通やサービス業の労働組合が加盟する「UAゼンセン」が6月に公表した調査結果では、従業員3万3133人の46・8%が「直近2年以内にカスハラ被害にあった」と回答。迷惑行為について、約3分の1が「増えている」と答えた。

 心身の不調で離職や自殺に追い込まれる人も多く、都は労働界の要請を受け、昨年秋から有識者とともに対策を検討してきた。議論ではカスハラを禁じることに異論はなかったが、「顧客の正当な要求もカスハラとされれば、消費者の権利を侵害されないか」との懸念も出た。

 そこで、都は年内に、カスハラの具体事例をまとめた「指針」を策定し、各業界に示すことで実効性を確保する考えだ。都の検討会で委員を務めた連合東京の佐々木啓真ひろまさ副事務局長は「カスハラの防止効果が期待される防犯カメラや、録音機能付き電話の導入は、中小企業にとっては費用のハードルがある。対策を進める事業者への都の支援も大切だ」と話す。

 都の動きは官民に波及している。政府は今年6月の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に初めてカスハラ対策強化を盛り込んだ。翌月の厚生労働省の有識者検討会は、企業に対策を義務づける法制化が必要と提言した。民間ではJR東日本や全日空、日本航空が相次いで、カスハラに厳正に対処する方針を打ち出した。

 カスハラ問題に詳しい桐生正幸・東洋大教授(犯罪心理学)は「カスハラの背景には、企業間の過剰なサービス競争と、『悪質な苦情を処理して一人前』といった風土がある。本来、消費者と企業は対等な立場だから、条例化により、消費者が認識を改めるのと同時に、企業も客に過度にへりくだる意識をなくすきっかけになればいい」と話す。

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