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インダス川河畔の数千年にわたる「世界遺産級の岩絵」数万点、巨大ダム建設で水没の危機

読売新聞 / 2024年10月6日 11時0分

 古代シルクロード沿いにあるパキスタン北部のインダス川河畔で、少なくとも数千年にわたって刻まれてきた岩絵数万点が、巨大ダム建設によって水没する危機にさらされている。現地で調査した奈良大の杉山智昭准教授(博物館学・保存科学)は「世界遺産級の文化財」として、パキスタン政府に対し早急な保存を訴えている。(橿原支局長 関口和哉)

 岩絵は河畔にある花こう岩に刻まれ、大きさは10センチ~3メートル程度。中国新疆ウイグル自治区とパキスタンを結ぶカラコルム・ハイウェーとインダス川が並行するチラス地域を中心に見つかっている。ハイウェーは古代シルクロードをなぞっている。

 数千年前に制作されたとみられる人間の手や足をかたどった岩絵のほか、紀元前後~8世紀の仏像やペルシャ風の人物像、古代の中央アジアで使われたカローシュティー文字やインドのブラーフミー文字など様々だ。異なる文化的な背景を持つ人々が連綿と制作してきたことがわかり、人類史をひもとく上で不可欠な文化遺産といえる。

 調査はドイツや日本の考古学者らが進めてきたが、描かれた年代や総数など全体像はよくわかっていない。そうした状況のまま、大規模な水力発電用ダム2基(ダス・ダム、ディアメールバシャ・ダム)の建設によって、水没が避けられなくなっている。

 杉山准教授は今年3月に現地を訪れた。岩絵数百点をデジタルカメラで撮影し、全地球測位システム(GPS)で位置を記録。表面の状態も観察し、自然風化によって岩盤に亀裂が入り、剥落はくらくするなど劣化が進んでいることがわかった。このまま水没すれば、絵が失われてしまうのは必至という。

 パキスタン水力発電公社によると、ダス・ダムでは建設工事の80%が終了し、予定では2026年から電力の供給を始める。読売新聞の取材に対し、「重要な岩絵は3次元測定をしてレプリカを作成し、博物館に展示する予定だ」と説明している。

 杉山准教授は「パキスタン政府はダム建設を優先しているようで、調査、保存は十分ではない。多くが良好な状態で残っており、岩絵全体を記録して一部を博物館へ移設するなど、日本も何らかの協力ができれば」と話している。

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