子供を持たない「チャイルドフリー」、ロシアで宣伝禁止法案…10人以上出産の女性は「英雄」
読売新聞 / 2024年10月7日 9時23分
自分の意思で子供を持たないことを選ぶ生き方「チャイルドフリー」をインターネットなどで広めることを禁止する法案がロシア下院で審議されている。多子家族を奨励するプーチン露大統領の考えに反する思想への締め付けが強まっている。
反「伝統的価値観」締め付け
「出産に反対するプロパガンダ(政治宣伝)は、自分を産んだ母親、そして国家に逆らうことだ」
タス通信によると、法案の共同提案者のビャチェスラフ・ウォロジン下院議長は2日、国会審議で慎重姿勢を見せる野党を非難した。
法案は、インターネット、マスメディア、映画などでチャイルドフリーの「宣伝」を禁止する。違反すれば最大500万ルーブル(約780万円)の罰金を科す方針だ。
法案には100人以上の議員が賛同している。露大統領府も「出産を阻害するものは全てなくなるべきだ」(大統領報道官)と歓迎する立場で、成立は確実視されている。法案は下院と上院での可決後、プーチン氏の署名で成立する。
プーチン氏は、男女が結婚し、子供をたくさん持つことをロシアの「伝統的価値観」と位置付けている。今年3月の「国際女性デー」に合わせた演説では、「母親になることは女性のすばらしい使命だ」と強調した。プーチン政権は10人以上子供を産んだ女性を「英雄」として表彰している。
逆に、価値観から外れる考えは弾圧の対象だ。典型例は性的少数者(LGBTQ)で、プーチン政権は権利を訴えるデモを「伝統的価値を破壊する欧米の思想」と批判。昨年11月の露最高裁判所の判決は、権利を訴える市民運動を「過激派」と認定して禁止した。
露有力紙RBCによると、今年9月から小学校の高学年などを対象に「家族のあるべき姿」を学ぶ科目が新設された。結婚して多くの子供を持つことの価値観を学ぶといい、多子家族を「理想の形」として教え込む狙いがありそうだ。
背景には、少子化に対するプーチン氏の危機感がある。1人の女性が生涯に産む子供の推計人数である合計特殊出生率は2015年の1・78から、22年には1・42まで下がった。ウクライナ侵略で子供を持つ世代の男性に死傷者が出ていることもあり、出生率はさらに低下することが予想されている。
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