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鳥取砂丘を月面研究の「聖地」に…宇宙人材の育成へ「探査車の甲子園大会」構想、県も車両開発に挑戦

読売新聞 / 2024年10月7日 14時5分

5日に開催されたイベントで公開された、県の開発計画とは別のローバー(鳥取市で)

 鳥取県が今年度から、鳥取砂丘(鳥取市)発の小型月面探査車(ローバー)の開発に乗り出した。砂丘の砂が月面の砂に似ていて、研究機関や企業の実験利用が相次いでいることから企画した。県内企業や大学と連携し、最短で5年後に車体を月面で走らせる目標を掲げる。砂丘を月面研究の「聖地」にしようと、来年3月には、大学生らが簡易ローバーを開発し、性能を競う全国大会も開く。(鳥取支局 山内浩平)

 鳥取砂丘は、砂のきめ細かさや起伏に富んだ地形などが月面の環境に似ているとされる。2016年には東京の宇宙関連企業が県の許可を得て、砂丘を月面に見立ててローバーの試験走行を実施。その後も企業や大学の利用が相次ぎ、宇宙関連業界や研究者から注目を集めるようになった。

 そのため県は22年から「鳥取砂丘月面化プロジェクト」をスタートさせ、ローバーの走行試験などに使える実証フィールド「ルナテラス」(広さ0・5ヘクタール)を国立公園外の砂丘隣地に整備。今年度は関連費500万円を予算計上し、車体開発に挑戦する。参加する企業を確保するなど態勢構築や技術的な調査を進めており、来年度以降、具体的な研究開発に着手する。

 現在想定しているローバーは、全長50センチ、高さ30センチほど。地球上より高レベルの放射線が飛ぶ過酷な環境でも稼働する頑丈さに加え、遠隔で操作できる通信技術、暗くても月面や物体を捉えられるカメラ、不安定な砂地でも安定走行できるタイヤなどが必要になる。鳥取大乾燥地研究センターなどと連携し、こうした「月面仕様」を研究。月面で採取した砂れきの成分分析技術の確立にも取り組む。

 打ち上げ実施機関や費用確保などはまだ決まっていないが、早ければ5年後にロケットに積んで打ち上げたいという。実現すれば、月面の地形データ収集や、人間が生活する上で欠かせない「水」の探査を計画している。

 主要な開発現場となるのが「ルナテラス」だ。100メートルの直線を確保できる平地や5~20度の傾斜地があり、砂地を掘削して自由にコース設定して実験できる。国立公園内にある鳥取砂丘は利用時に県などの許可が必要だが、ルナテラスはそうした手続きの煩わしさがなく、多くの企業、大学が利用している。県は宇宙産業に関わる企業、研究機関の交流拠点になることを期待している。

 県は、来年3月に予定しているローバーの大会でもルナテラスを活用する。学生たちは月面に見立てて開発したローバーを走らせ、砂を採取して成分を分析するなどの任務の達成度を競う。宇宙人材の育成が目的で、県は大会を「ローバー界の甲子園」のような存在に育てたいという。

 県産業未来創造課の井田広之課長補佐は「車体開発など一連の取り組みを通じて県内の宇宙産業の技術を発展させ、『宇宙と言えば鳥取砂丘』と言われるようにしたい」と話している。

 ◆鳥取砂丘=中国山地のかこう岩が風化、堆積(たいせき)して形成されたとみられ、東西16キロ、南北2・4キロにわたる。国立公園内にあり、一部エリアは国天然記念物にも指定されている。鳥取県が2022年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの協力を得て月面と砂丘の環境を比較調査したところ、ともに1ミリ以下の細かい砂粒が大半を占めるなど類似性が確認された。

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