1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

[深層一直線]駄菓子も政治も 選択と決断…右松健太

読売新聞 / 2024年10月7日 17時0分

安川純撮影

値上げの秋の総選挙へ

 10月に入り、厳しい暑さは少しずつやわらいできたが、財布はこれから厳しくなりそうだ。秋の値上げラッシュ到来である。

 帝国データバンクの調査によると、10月に値上げする飲食料品は、お酒・飲料や食用油、菓子、調味料、乳製品など広く、今年最大の2911品目となるという。その中には、私も幼い頃から食べているロングセラーの駄菓子も含まれる。

 スナック菓子「うまい棒」は、12円から15円への値上げとなった。1979年に発売された「うまい棒」は10円で買える駄菓子として幅広い世代に愛されてきた。「お子様のお小遣いでも選ぶ楽しさを感じていただけるよう熟慮してきた」というが、原材料や人件費などのコスト上昇のため、おととし春に続いて、値上げに踏み切ったという。

 実家から歩いて数分のところに、駄菓子屋があった。店の引き戸を開けるとカランコロンと鈴の音が大きく鳴る。奥から「あら、ケンちゃん、いらっしゃい」と店主の「モリカワのおばちゃん」の優しい声が聞こえてきた。きなこ餅やあめ、ガム、ゼリー、スーパーボールにかんしゃく玉――。店内の棚やテーブルは、10円から50円で買える色とりどりの駄菓子や玩具でびっしりと埋め尽くされていた。その一角には、何種類もの「うまい棒」も陣取り、店をいっそう色鮮やかにさせていた。

 子供たちでごった返す店内。握りしめた100円玉できょうは何を買うか、選び抜くのは至難の業だった。じっくりと駄菓子を見定め、定番を選ぶか、新商品に挑戦するか、味を想像しながら幼い私なりに熟慮を重ねたものだ。

 長年、地域の子供たちに愛されていた店は10年近く前に閉じてしまったが、いつも「モリカワのおばちゃん」は、しゃがみ込みながらあれこれ悩む小さな背中を優しく見守ってくれていた。

 数ある中から選ぶといえば、この秋の永田町もそうである。自民党総裁選では9人の候補者から石破茂氏が新総裁に選ばれ、第102代首相に就任した。

 石破新首相も選択の連続である。党役員人事では、決選投票で総裁の座に押し上げたとされる党重鎮やベテランを重用した。組閣人事では13人が初入閣。また総裁選で石破氏を推薦した20人のうち6人が閣僚に就任するなど、自らに近い面々が顔をそろえた。

 これまで「党内野党」との皮肉を受けながらも、正論を貫く姿勢が国民人気につながった。解散を巡っては、持論を曲げる苦渋の選択を強いられたようだ。これからは首相として理想と現実、いつまでに結果を出すか、選択と決断の連続だろう。

 立憲民主党でも新代表に野田佳彦元首相が選ばれ、「本気で政権を取りにいく覚悟だ」と述べている。有権者にとっても、今月27日の総選挙では、選択が迫られている。

 かつて駄菓子屋にしゃがみ込み、あれこれ悩みながら選んでいた子供は大人になった。この国の未来のために何を選ぶのか――。いまの子供たちから、その背中を厳しく見られていると思いたい。

(BS日テレ「深層NEWS」キャスター)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください