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カスハラ条例 被害者を孤立させないように

読売新聞 / 2024年10月8日 5時0分

 顧客から理不尽な要求をされたり、罵倒されたりして、従業員が精神的に追い詰められるケースが絶えない。企業のほか国や自治体も働き手を守るための支援を強化すべきだ。

 顧客から従業員への過度のクレームや暴言などは、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」と呼ばれる。暴力を振るわれ、土下座を強要されることもあり、近年、社会問題となっている。

 対応が気にくわないと、店員の顔や名札を撮影し、「SNSで拡散するぞ」と脅す例もある。そのため、会社や店側が名札をイニシャル表記にするなどの対応を迫られる事態となっている。

 ただでさえ、不安やストレスが多い時代だ。社会が不寛容になっているとも指摘される。だからといって、顧客がそのストレスを発散するかのように、従業員を攻撃していいはずがない。

 こうした状況を受け、東京都は全国初のカスハラ防止条例を成立させた。カスハラは従業員の人格や尊厳の侵害にあたると明記し、企業には従業員の安全確保を、また顧客には「言動に注意を払う努力」を、それぞれ求めている。

 対応を企業任せにせず、行政が「カスハラは認めない」という姿勢を示したことは、評価できる。条例ができたことで、顧客側に対する抑止効果も期待できよう。

 被害者の心身の傷は深い。昨年度、カスハラが原因でうつ病などの精神疾患を発症し、労災認定された人は52人に上った。2020年には住宅メーカー社員だった24歳の男性が、顧客から繰り返し叱責しっせきを受けた末に自殺している。

 被害者は女性や若者が目立つ。暴言を吐いても大丈夫だろうと相手を軽く見て、強い態度に出ているのだとすれば、卑劣である。客なら何をしてもいいわけではないことを、肝に銘じたい。

 東京以外でも条例制定の動きがある。カスハラを許さないという機運を高めることが大切だ。

 とはいえ、どのような行為がカスハラに当たるのか、線引きは難しい。顧客の正当な訴えまで排除することになっては、サービスの向上は望めまい。

 都は来年4月の条例施行までにカスハラの代表的な事例を公表する。企業はこれらも参考に、顧客とのトラブルが起きた場合の対処法を検討してほしい。複数の従業員で対応したり、電話の録音機能を整えたりすることも有効だ。

 国や自治体も、被害者や企業側が相談できる窓口を設けるなどの支援を講じる必要がある。

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