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昨年亡命した北朝鮮の元外交官、核開発を厳しく批判「住民が望むのは食料」「民心は金正恩に背を向けた」

読売新聞 / 2024年10月9日 5時0分

2日、ソウルで読売新聞のインタビューに応じる元北朝鮮キューバ大使館参事官の李日奎氏=小池和樹撮影

 【ソウル=小池和樹、中川孝之】北朝鮮の元キューバ大使館参事官で、昨年11月に韓国に亡命した李日奎リイルギュ氏(52)が2日、ソウルで読売新聞のインタビューに応じた。北朝鮮の住民の暮らしを犠牲にした核開発を厳しく批判し、「北朝鮮の外交官であることが恥ずかしかった」と語った。

崩壊すべきだ

 亡命した北朝鮮外交官の中で太永浩テヨンホ・元駐英公使に次ぐ高位となる。日本メディアの取材を受けるのは初めてだ。

 李氏は2018年にキューバの高官が訪朝した際などに金正恩キムジョンウン朝鮮労働党総書記と面会し、直接質問を受けた。「印象は悪くなかった。彼そのものを嫌いなわけではないが行いが醜い」。住民を飢餓にさらし、ぜいたく三昧の生活を送っていると非難した。「独裁体制は崩壊しなければならない。永遠に続くと思ったら大きな間違いだ」と語気を強めた。

 正恩氏の視察に同行している「ジュエ」氏とされる娘が高級な服を着て幹部らの敬礼を受ける様子に住民らは「拒否感を抱いている」という。

 李氏は核開発を当初、誇りに感じたが、「(06年の)最初の核実験から何年たっても生活は悪化するばかり。住民は、核兵器は金氏一族を守るためのものだと気づいた」と指摘した。「住民が望むのは一食分の食料だ。民心は金正恩に背を向けた」との見方を示した。

消えた忠誠心

 北朝鮮の外交官は2種類いるという。外務省や対外経済省から派遣される正統な外交官、国防省派遣の駐在武官のほか、核兵器の製造などに関与し、資金調達を行う「非正統的な外交官」だ。キューバ大使館にも核開発の資金調達を担う人物らがいた。外交旅券を持っているが、大使を含む外務省出身者らには仕事の詳しい内容は知らされなかった。

 「(北朝鮮は)私たちですら嫌になる行為をたくさんしているのに、そんな体制を守らなければならなかった。誇りや忠誠心が生まれるだろうか」と話した。

 外交官の苦しい生活にも触れた。キューバでの月給は500ドル(約7万3000円)。生活費を捻出するため、キューバ産葉巻を密輸出した。労働に見合った報酬が得られず、北朝鮮の外交官は「ネクタイを締めたコッチェビ(路上生活の子供)」だと語った。

 海外で北朝鮮外交官は冷たい視線を浴びるが、韓国の外交官は歓迎されるという。「何度もサウス(韓国)から来たと言いたいと思った」という。

 亡命計画は決行の6時間前に妻子に打ち明けた。未明のキューバの空港で、飛行機に乗るまでの1時間が「10年のように感じた」と振り返った。「腕時計を100回は見た」

 北朝鮮外務省の元同僚らには「内部からの変化が難しければ国を離れ、一度きりの人生を人間らしく生きてほしい」とメッセージを送った。

日朝交渉の準備

 11月の米大統領選で、正恩氏はトランプ前大統領の再選に期待しているとの見方を示した。民主党政権よりも米側が北朝鮮に関心をもつ可能性があるためだ。北朝鮮では正恩氏とトランプ氏の「親交」が宣伝され、正恩氏の求心力が高まる効果もあると予想した。

 正恩氏が1月、岸田首相(当時)に能登半島地震の被害を見舞う電報を送ったのは、「日本人拉致問題で向き合う準備ができたというメッセージ」だったとみている。

 その後、妹の金与正キムヨジョン党副部長が「解決済み」とする拉致問題にあえて触れる談話を発表したのも、日本側に期待を抱かせるためだったとの見方を示した。

 岸田政権の退陣が近いと判断し、交渉は進まなかったものの、石破政権の出方を探っているだろうと分析した。

リ・イルギュ 平壌外国語大卒、1999年に北朝鮮外務省入省。2011~16年、19~23年キューバ大使館で勤務。中南米の専門家で担当副局長も歴任。金正恩氏から表彰を受けたこともある。

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