経済対策指示 漫然と歳出の膨張を続けるな
読売新聞 / 2024年10月9日 5時0分
賃金と投資がともに増える「成長型経済」へと転換を図るべき局面である。漫然と歳出を膨らませてはならない。成長を後押しする効果的な資金の使い道を練ることが大切だ。
石破首相は閣僚に対し、物価高対策や、賃上げの促進などを柱とした経済対策をまとめるよう指示した。27日投開票の衆院選後、速やかに決定し、財源の裏付けとなる2024年度補正予算案を国会に提出する方針だという。
エネルギー価格の抑制策を継続するか否かが焦点になる。
ウクライナ危機で原油価格などが高騰したことを受け、23年1月に電気・ガス代の補助制度が始まった。原油価格などが落ち着き、今年5月にいったん打ち切ったが、酷暑対策を名目に8月からの3か月分に限って再開した。
22年1月から始めたガソリン代の補助制度も、延長を繰り返し、現在は年末を期限としている。
これらの補助は、脱炭素に資する省エネ意欲を低下させ、市場をゆがめるとの批判がある。延々と続けてもよい政策ではない。
これまで補助制度に総額11兆円超の予算が充てられている。巨額の支出に見合う政策効果は乏しいとの指摘は多い。制度を終える出口を探っていく必要がある。
規模ありきの経済対策とすることも慎んでもらいたい。
今回の対策には、昨年秋の経済対策と同様に、低所得世帯向けの給付金が盛り込まれる見通しだという。衆院選に向け、予算のバラマキをアピールしていくようでは困る。コメの価格高騰などに取り組むことが急務ではないか。
補正予算に不要不急の事業が紛れ込まぬようにすべきだ。本来の目的は、年度途中で生じた予期せぬ問題に対処することである。
コロナ禍前の19年度の補正予算は3・2兆円で、平時に10兆円を超えることは少なかった。だが、コロナ禍をきっかけに、数十兆円に上る大型補正が常態化し、23年度も13・1兆円を計上した。
新政権では、「歳出構造を平時に戻していく」との政府方針を着実に進めていかねばならない。
首相は、岸田前内閣の経済政策を継承するというが、その実行力に対し、金融市場には不安感がある。看板政策の地方創生も具体的な内容が明確ではない。
新政権として、確固とした成長戦略を固めることが重要だ。それに基づいて、有効な経済活性化策を入念に検討し、必要な資金は補正ではなく、来年度の当初予算に盛り込んでいくのが筋である。
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