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パレスチナ人のもてなし料理「マクルゥベ」は炊き込みご飯…「ひっくり返された」という意味です

読売新聞 / 2024年10月11日 10時6分

 来客の際、イスラム教の祭りの時、誕生日……。そんな大切な記念日にパレスチナ人がもてなし料理として作り、食べるのがマクルゥベと呼ばれる炊き込みご飯だ。マクルゥベとは、アラビア語で「ひっくり返された」という意味。その名の通り、鍋を大皿にひっくり返して提供される。

パレスチナの「ソウルフード」

 パレスチナ自治区ヨルダン川西岸の拠点都市ラマッラで1965年から女性の自立を支援する民間団体「イナーシャ・アルウスラ」では、パレスチナ人の女性に料理や服飾デザインなどを教えてきた。ここで6年間、料理を教えるガラム・クランさん(30)は「パレスチナ人でマクルゥベを嫌いな人はいない。パレスチナの『ソウルフード』です」と語る。

スパイスの中身は企業秘密

 マクルゥベを作るには手間がかかる。料理をするのは基本的に女性だ。

 骨付きの鶏肉を煮込んでスープを取った後、その鶏肉をナスやジャガイモ、カリフラワーとともに揚げる。次にシナモンやフェンネル、コショウなどのスパイスを生米と混ぜる。スパイスの調合によって味は変わる。クランさんは6種類のスパイスを使うが、「中身は企業秘密」とほほ笑んだ。

 揚げた鶏肉や野菜を鍋底に敷いた後、スパイスと混ぜ合わせた米を入れる。鶏肉から取ったスープを入れて20分ほど煮込めば出来上がりだ。少し焦げたぐらいがちょうどいいそうだ。

 鍋をひっくり返して大皿の上に置き、鍋の底をスプーンでたたく。ケーキのような形をしたマクルゥベが姿を現すと、集まった人が歓声を上げるのがお約束だ。

 スパイスの染み込んだ米と、揚げた鶏肉、野菜は日本人にとっても親しみやすい。中東で続く紛争のことはしばし忘れ、食べることに熱中した。

作り方は母から学ぶ

 パレスチナの女性は、母親や義母からマクルゥベの作り方を学ぶ。鶏肉でなく、羊の肉を入れることもある。家庭料理のため、提供するレストランを見つけるのは意外と難しい。

普段の食事は簡素

 中東の料理は、オスマン帝国の支配下で、共通の食文化圏の中で形成されてきた。パレスチナと対立するイスラエルでも好んで食べられている。中でも、ケバブ(肉の串焼き)が有名だが、庶民にとって羊の肉は高く、パレスチナの平均的な家庭では月1回食べられる程度だ。

 普段の食事は簡素だ。朝は、ホブス(平たい丸いパン)に、ザアタルと呼ばれるハーブミックスか、ひよこ豆をつぶしたホモスをつけて食べるのが定番だ。昼は、ホブスにひよこ豆をつぶして揚げたファラフェルか、薄く切った肉を挟んで手軽に食べる人が多い。

 主食は、パンのほか、米を食べる。マクルゥベは、シリアやヨルダンなど東地中海地方で食べられているが、パレスチナ人にとっては「国民食」だ。

 マクルゥベは、聖地エルサレムを十字軍から奪還したイスラム世界の英雄サラディンが好んだと伝わることから「勝利の食事」とも言われているとか。パレスチナで今、その響きを耳にすると、どうしても物騒に聞こえてしまう。

 国内外の総支局長が、地域の自慢の味を紹介します。

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