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水上特攻へ向かう大和、若い少尉候補生を下艦させた司令長官・伊藤整一…顕彰プロジェクト再始動

読売新聞 / 2024年10月9日 11時4分

伊藤整一の墓前で周辺の整備について話す野田さん(左)と伊藤さん

 福岡県の現みやま市出身で、海軍第二艦隊司令長官として戦艦「大和」に乗り、太平洋戦争末期の沖縄水上特攻作戦で戦死した伊藤整一の墓周辺を整備するプロジェクトが再び動き出した。伊藤を顕彰する団体が計画し、3年前にクラウドファンディング(CF)で資金を集めたが、実行できていなかった。大和沈没と伊藤の戦死から80年の節目となる来年4月7日、生まれ変わった墓所で、ここ数年途絶えている墓前祭を再開する。(大塚晴司)

 伊藤は旧開村生まれ。中学伝習館(現・県立伝習館高)から海軍兵学校へ進み、米駐在を経て、軍令部次長などの要職を歴任した。

 沖縄水上特攻では、大和や軽巡洋艦「矢矧やはぎ」、戦後に北九州市で防波堤として再利用される駆逐艦「涼月すずつき」などが出撃。鹿児島県沖の海戦で、大和や矢矧など6隻が沈没した。作戦に反対だった伊藤は、出撃直前に若い少尉候補生たちを下艦させたほか、米軍の猛攻を受けて作戦中止を決断。約1700人の生還につながったとされる。自身は大和と共に没し、1958年の命日に故郷に近い大牟田市岬に墓と顕彰碑が建立された。

 伊藤を顕彰する一般社団法人「大和さくらの会」は2021年に墓園整備を計画。CFで支援を呼びかけ、477人から総額657万4000円が寄せられたが、会の代表で元みやま市議の岡部挙さん(92)が入退院を繰り返したり、コロナ禍に見舞われたりして頓挫していた。

 戦後80年に向けて計画を再び動かそうと、久留米市を拠点に活動するシンガー・ソングライターの野田かつひこさん(58)、伊藤の弟の孫にあたる伊藤眞さん(68)(大牟田市)、みやま市議の中尾眞智子さん(71)、海上自衛隊OBの津田慶一さん(90)(福岡市南区)ら、同会や岡部さんと関わりがある有志が立ち上がった。

 墓は道路から奥まった分かりにくい場所にあり、案内板も失われている。計画では、3年前の支援金で道路に面した空き家や周辺の農地を購入し、墓参に訪れた人たちの駐車場や参道として整備する。見晴らしも改善するという。

 野田さんは伊藤にちなんだ曲「大和桜」を3年がかりで書き上げ、命日には欠かさず墓前で歌ってきた。かつての墓前祭や関連行事はコロナ禍以降開かれなくなっており、「一人でも多く訪れ、平和について考える場にできれば」と願う。

 鹿児島県沖の海戦で大破しながら沈没を免れた涼月の乗組員、太田五郎さん(2016年に96歳で死去)の長男勘さん(72)(佐賀県みやき町)は「伊藤長官の決断があったからこそ、父たちは生きて帰り、戦後日本のために働くことができた。ぜひ墓前にお参りしたい」という。

 大和と共に沈んだ矢矧の乗組員だった祖父が戦死し、CFに協力した成松明孝さん(61)(福岡市南区)は「整備はどうなったのかと心配していた。再開されて安心した」と話した。

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