袴田巌さんの無罪確定、静岡地検が上訴権を放棄

袴田巌さん

　１９６６年の静岡県一家４人殺害事件で、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん（８８）を無罪とした静岡地裁の再審判決について、静岡地検は９日午前、上訴権を放棄する手続きを取った。１０日の控訴期限を前に、袴田さんの無罪が確定した。

　静岡県警の津田隆好本部長は９日朝、報道陣の取材に応じ、「袴田さんが長きにわたって法的地位が不安定な状況に置かれていたことについて、申し訳なく思っている」と謝罪。袴田さん本人へも謝罪する意向を示し、「方法については本人や関係者と相談したい」と述べた。

　再審公判は昨年１０月に始まり、先月２６日の判決で無罪が言い渡された。判決では、犯行時の着衣とされた衣類など三つの証拠について、「捜査機関によって捏造（ねつぞう）された」と認定するなど捜査当局を厳しく批判した。

　検察当局は今月８日に控訴を断念したと発表。畝本（うねもと）直美・検事総長は談話で「判決は到底承服できないもので、控訴して上級審の判断を仰ぐべき内容だ」とする一方、「袴田さんが結果として長期間、不安定な状況にあったことを検察としても申し訳なく思う」と謝罪した。

　事件では、同県清水市（現・静岡市清水区）で、みそ製造会社の専務宅から４人の他殺体が見つかり、従業員だった袴田さんが逮捕、起訴されて８０年に死刑が確定した。２００８年からの第２次再審請求で昨年３月、再審開始が決定。袴田さんは１４年に釈放されていた。