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皇居で蚕を飼育された美智子さま、その繭から紡がれた糸は美しいドレスに…フランスで称賛「superbe!」

読売新聞 / 2024年10月10日 8時30分

美智子さまの装い<2>

 上皇后美智子さまが皇后として、皇居で蚕を飼育されていたことはよく知られている。その繭から紡がれた糸は美しい絹織物となり、美智子さまが着用されるドレスともなっていた。

小石丸の存続、「日本の養蚕にとってとても大きなこと」

 2014年3月。天皇、皇后両陛下は伊勢神宮を参拝された。美智子さまの白いドレスは、皇居の紅葉山御養蚕所でご自身が育てられた蚕の糸を用いて織り上げられたもの。毎年、数種類の蚕を育てられ、その中には希少となった純国産種「小石丸」もあった。

 繭の形が愛らしく、糸が繊細でとても美しい。もうしばらく古いものも残しておきたいので、育ててみましょう――。小石丸は古くからの在来種だが、次第に外国の蚕との交雑種に押されて激減。美智子さまが引き継がれた頃には御養蚕所での飼育も中止が検討されていた。育て続けることになったのは美智子さまのご意向からだった。

 05年、12年に宮内庁三の丸尚蔵館、14年には仏パリで催された皇室の養蚕に関する展示を担当した宮内庁の太田彩さんは「小石丸を絶やさず存続させたご決断は、日本の養蚕にとってとても大きなことでした」と語る。その後、小石丸は古代の絹の風合いを伝えられる糸だとして、正倉院宝物などの復元でも役割を果たすことになった。

 ただ、蚕を飼育することだけにお心がとどまっているわけではない。14年のパリでの展示では、蚕の病気でフランスの養蚕が打撃を受け、ナポレオン3世の要請で日本から蚕を送って復興を助けたなど、絹と養蚕をめぐる日仏交流の歴史をたどる一角が設けられた。美智子さまが強く望まれたからだという。

 会場は、日本の独立行政法人・国際交流基金が仏での情報発信拠点とするパリ日本文化会館。事業部長の牧瀬浩一さんは「約2か月の期間中に5000人近い来場者があったのは、日本に親しみを感じられる展示だったからではないでしょうか」と話す。

 上皇さまが幼少の頃のお祝い着、美智子さまが皇太子妃や皇后として身にまとわれた絹のドレスなども展示され、日本の絹文化が紹介された。感想を書き込むノートは今も同会館に保管されており、フランス語で「superbe(素晴らしい)!」などと驚きが表現されていた。

歴代の皇后が担う

 近代化を進めた明治期、養蚕は国の重要産業となり、奨励のため、明治天皇のきさきである昭憲皇太后が自ら取り組み始めた。歴代の皇后が春から初夏にかけて桑摘み、蚕に桑の葉を与える給桑きゅうそうといった作業や「御養蚕はじめの儀」などの行事を通して担われてきた。

 宮内庁の太田さんによると、小型でくびれた形の小石丸の繭からは細くて良質な糸がとれるが、交雑種に比べて切れやすく産出量が少ない。だが、細くてしなやかな質感が古代の絹糸に近いことがわかり、皇居で育てる小石丸の繭は増産された。

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