岩手で動けぬ自民…「政治とカネ」問題で参院補選は不戦敗選択、衆院選に向けた活動制約され焦り
読売新聞 / 2024年10月10日 12時13分
参院岩手選挙区補欠選挙が10日告示され、前議員と新人4人の計5人が立候補を届け出た。投開票日は衆院選と同じ27日。国から秘書給与などをだまし取ったとして詐欺罪で在宅起訴された広瀬めぐみ前参院議員(自民党を離党)の辞職に伴う補選だが、公職選挙法の規定で、衆院選の立候補予定者は15日の公示まで街頭活動が制限される。「政治とカネ」の問題で逆風が吹く自民側は危機感を募らせている。(盛岡支局 冨田駿、有村瑞希)
「自民党政治は裏金問題、詐欺問題と腐敗が極まっている。腐敗した政治を終わらせるために、今回の補選はその第一歩だ」
盛岡市内の繁華街で開かれた参院補選の立憲民主党前議員の第一声。応援に駆けつけた、衆院選総合選挙対策本部長代行を務める前衆院議員の小沢一郎氏はこう呼びかけた。
「小沢王国」とも呼ばれる岩手だが、前回2021年の衆院選では県内の3小選挙区中、立民は1議席の獲得にとどまった。岩手3区から出た小沢氏も選挙区で初めて苦杯を喫し、比例で復活当選。衝撃は大きく、翌22年の参院選岩手選挙区でも再選を目指した現職が自民新人に敗れた。
その参院選で初当選したのが広瀬前議員だったが、公設秘書給与をだまし取ったとして今年7月、東京地検特捜部から強制捜査を受けると、翌月に辞職した。
立民県連幹部は「これだけ不名誉な選挙は岩手ではなかった」と振り返り、敵失による議席奪還のチャンスに「補選で勝ち、衆院選は自公を過半数割れに追い込んで、政権交代を実現する」と意気込む。
これに対し、自民は県連の一部に候補者擁立を求める声はあったものの、「広瀬前議員を擁立したけじめをつける」として補選には候補を出さなかった。
複数の選挙による混乱を防ぐため、公選法の規定で、衆院選の立候補予定者らは街頭演説やビラ配布などは公示まで出来なくなる。参院補選の候補を応援することはできる。
衆院岩手3区から立候補を予定する自民前議員の藤原崇氏は今月6日、選対会議を開き、補選告示後に規制される政治活動について確認した。わずか5日間だが、週末には3連休も控えており、有権者に直接アピールする機会が減る影響は小さくない。後援会幹部は「(5日間は)立民の選挙カーが県内を回るので、こちらにはマイナスだ」と打ち明けた。
派閥の政治資金規正法違反事件を巡り、収支報告書に14万円の不記載があったとして、藤原氏は、比例選への重複立候補は認められない見通しだ。前回は小選挙区で勝利したものの、過去3回は小沢氏に敗れて比例で復活しているだけに、厳しい戦いが予想される。
この日、小沢氏は参院補選に立候補した前議員に同行し、岩手3区を構成する岩手県花巻市内の街頭にも立った。立民県連幹部は「自民が活動できない数日間、衆院の立候補予定者が一緒に街頭に立てるのはメリットだ」と説明する。
藤原氏は9日夕の解散後、地元へと戻ると、この日は後援会組織の幹部らと会った。「公示まで活動は制限されるが、その中でやれることはたくさんある。12日間の選挙戦では、できることを徹底的にやりたい」と気を引き締めた。
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