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生成AI市場 巨大ITの支配をどう防ぐか

読売新聞 / 2024年10月11日 5時0分

 社会や経済への影響が大きい生成AI(人工知能)の市場で、巨大IT企業による寡占が進めば弊害が生じる。政府は、公正な競争環境の確保へと早急に動かねばならない。

 公正取引委員会は、生成AI市場の実態調査を開始した。一部の大企業による寡占で、新規参入の阻止といった独占禁止法上の問題が起きる可能性があるためだ。

 企業に情報提供を求めているほか、有識者への聞き取りを行う。来年春にも調査結果を公表し、対処方針を示すという。

 生成AIは、インターネット上の膨大なデータを学習し、自然な表現の回答や画像などを作る。開発には、膨大なデータや、高性能な半導体、専門人材が欠かせず、巨額の資金が必要になる。

 市場はまだ黎明れいめい期にあるが、米国のグーグル、マイクロソフトなどの巨大ITやオープンAIが、データなどの囲い込みを強めている。弊害を防ぐため、公取委が早期に調査に入ったのは妥当だ。

 公取委は懸念される点として、強い立場にある企業がデータを独占し、競合他社に使わせないようにする「利用制限」を挙げた。

 既存サービスを提供する条件として、自社の生成AIを利用させる「抱き合わせ」や、生成AIが示す検索結果の要約などで、自社サービスを多く表示させる「自社優遇」も危惧している。公取委は厳密に確認してもらいたい。

 今年のノーベル賞は、120年超の歴史の中で、初めてAI関連の研究が選ばれた。AIがもたらす変化は産業革命を超えるとも言われており、社会に与える影響の大きさが考慮されたのだろう。

 一方で、AIの負の側面に言及する動きも増えている。

 物理学賞に決まったジェフリー・ヒントン氏は、生成AIの基盤技術である深層学習で画期的な論文を発表し、「AIのゴッドファーザー」と呼ばれている。

 だが、今では、偽情報の氾濫や、詐欺の横行、選挙への悪影響などに警鐘を鳴らしている。

 検索サービスなど既存のデジタル市場では、各国の競争当局が手をこまねいている間に、巨大ITによる寡占の弊害が生じた。

 同じように生成AIの市場でも支配力が強まれば、負の影響が大きくなる恐れがある。同じてつを踏んではならない。

 米欧の競争当局も、既に調査に乗り出しており、AI市場の寡占に懸念を示す共同声明を発表した。日本も連携を強化して、市場を監視していくことが重要だ。

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