「外圧」受け転身図るセブン&アイHD…買収提案に根強い反対、市場は「イトーヨーカ堂切り離しで阻止する作戦」
読売新聞 / 2024年10月11日 7時20分
巨大流通グループとして君臨してきたセブン&アイ・ホールディングス(HD)が岐路に立っている。不振の祖業を切り離し、コンビニエンスストア専業への転身を図る構造改革を発表したものの、国内外のコンビニ事業も不調だ。カナダ同業から買収提案を受ける中、経営のかじ取りは正念場を迎えている。(金井智彦)
聖域の祖業
「同じ屋根の下では成長投資がしにくい状況が続いてきた」
セブン&アイHDの井阪隆一社長は10日の記者会見で、祖業のスーパー、イトーヨーカ堂などを事実上、分離する決断に至った理由を説明した。
セブン&アイHDは現在、コンビニやスーパー、外食など約180社を抱える巨大流通企業だが、前身は1920年に開業した東京・浅草の洋品店「羊華堂」にさかのぼる。高度経済成長期の旺盛な消費欲を背景に店舗網を拡大してきた。
ただ近年は、専門店を多く抱えるショッピングモールに押されて不振が続き、ヨーカ堂は4年連続の赤字となっていた。この日発表した2024年8月中間決算では19億円の営業赤字を出している。投資ファンドは再三、スーパー事業の切り離しを求めてきたが「一時代を築いた創業家への気遣い」(関係者)から、経営陣にとって聖域扱いとなり、抜本的な構造改革に踏み切れなかった。
前進
遅々として進まなかった構造改革が大きく前進したきっかけは、カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールからの買収提案だ。
買収価格5・5兆円規模とされる最初の提案には「企業価値を十分に反映していない」と反論して退けた。しかしクシュタールは、7兆円規模の再提案を示し、買収意思の固さを見せつけている。
再提案について井阪氏は「企業価値を上げるものであれば、
コンビニも不調
一方で、主力のコンビニ事業も揺らぐ。セブン&アイHDの24年8月中間連結決算で、国内コンビニ事業の営業利益は前年同期比7・8%減の1277億円と落ち込んだ。物価高による来店客の減少が響いた。
成長を期待し、約2兆円で買収した米国コンビニ事業も急ブレーキがかかった。海外コンビニ事業の営業利益は35%減の733億円に沈み、相乗効果を生み出せていない。
セブン&アイHDの株価は長年、低迷を続けており、業績の悪化が追い打ちをかけかねない。UBS証券の風早隆弘氏は「経営陣は企業価値を高め、クシュタールの提示額を上回る株価まで引き上げなければ、買収リスクにさらされ続ける」と指摘する。
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