芸術・芸能分野の製作スタッフ、35%が「過労死ライン」相当の拘束時間…全業種平均は6%
読売新聞 / 2024年10月11日 11時13分
政府は11日、労働現場の過労の実態などをまとめた2024年版の「過労死等防止対策白書」を閣議決定した。今回は芸術・芸能分野の製作スタッフの働き方を初めて調査。週の拘束時間が「過労死ライン」に相当する60時間以上の人は35%で、全業種平均の6%を大幅に上回り、過重労働の一端が浮き彫りになった。
白書では、製作スタッフ488人(男性290人、女性188人、性別未回答10人)に対し、昨年10~12月に行ったアンケート調査の結果を分析した。
1週間の始業から終業までの拘束時間の合計が60時間以上だった人を職種別にみると、音響や照明、小道具などの「技術スタッフ」が46%で最多。「舞台監督・演出関係など」が41%、「映像監督・助監督など」が34%で続いた。
打ち合わせなども含め仕事の予定がない休日は、「月0~3日」との回答が27%に上った。仕事の関係者からのハラスメント経験については、42%が「心が傷つくことを言われた」、22%が「殴られた、どなられた」と回答した。うつや不安障害の疑いがある人は31%で、全就業者平均の27%より高かった。
調査に協力した一般社団法人「日本芸能従事者協会」(東京)によると、製作スタッフの多くは、企業などに雇われないフリーランスの立場で、労働時間などを規制する労働関係法令の保護対象になっていない。
このため、現場では撮影や演出の準備などに追われて休日をほとんど取れず、長時間の労働や拘束を余儀なくされがちだという。
同協会の森崎めぐみ代表理事は取材に対し、「契約を切られる不安から労働条件の改善やハラスメント被害を言い出せない人も多い。発注事業者は長時間労働にならないよう配慮する必要がある。協会としても国などと連携し、メンタルケアの相談体制をさらに強化していきたい」と話した。
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