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NPB公式記録員、トイレに立たないため試合の数時間前から水分取らず…2人1組で安打や失策判断

読売新聞 / 2024年10月12日 5時0分

 今年で90周年を迎えたプロ野球。様々な記録から試合を楽しめるのも魅力の一つだ。その陰には、一つ一つのプレーを丹念に追う日本野球機構(NPB)所属の公式記録員の存在がある。

「安打」「失策」2人1組で判断 

 「史上89人目」「通算101度目」「巨人の選手が甲子園で達成したのは、1936年の沢村栄治以来」――。

 5月24日、読売巨人軍の戸郷翔征投手が、甲子園球場(兵庫県西宮市)で阪神タイガースを相手に演じた無安打無得点試合(ノーヒットノーラン)は、様々な観点で報じられた。NPBが残す膨大な公式記録が根拠だ。

 NPB所属の公式記録員は現在25人。今季は数年ぶりに採用を行い、約100倍の競争率の末、3人を補充した。一軍記録員はグラウンドを見渡せる席に2人1組で座り、1球ごとの結果をスコアシートに記入するほか、プレーを見て「安打」「失策」「暴投」なども判断する。

 記録は選手の評価に直結するため、的確かつ即座に判定する必要がある。5月24日の試合でも、当たり損ねのゴロを捕った戸郷投手の一塁送球がそれ、打者がセーフになる場面があった。正確に送球してもセーフのタイミングであれば「安打」になるが、記録員は投手のミスによる出塁として「失策」を記録。無安打無得点は継続となった。

 歴代5位の2039試合で記録員を務めた元パ・リーグ記録部長の五十嵐義夫さん(80)は「慣れるまでどちらが勝ったかも分からないくらい緊張した。プレー中はボールから一切目を離さなかった」。トイレに立たないように、試合の数時間前から水分を取らなかったそうだ。

 自身は完全試合を2度、無安打無得点試合を3度担当。「心情的には投手に達成させたくなるが、そうもいかない。1試合1試合がプロ野球の歴史。同じプレーで他の記録員と判断が違わないように心がけた」と語る。

 記録員の重要性は、1934年に初のプロ球団として巨人が誕生する以前、10年発行のルールブック「現行野球規則」の付録資料にまで遡る。記録の役割を「試合状況を永久に伝える」「チームや選手の成績算出の基礎を作る」とし、記録員を「野球の歴史を作る上で最も必要」と位置付けた。

 プロ野球の公式戦はこの記述に基づき、当初から全試合で記録員が置かれた。ただ、草創期は記者が記録員を務めた例もあり、スコアシートの書式が統一されていないなどの不備があった。50年にセ、パの2リーグに分立する以前は詳しい成績が不明な試合もあったという。

 NPBは60年代以降、未整理のスコアを清書し、記録の再集計を進めた。76年には報道機関の調査で本塁打の集計ミスが判明。プロ野球通算1万号を放った選手が、寺田陽介さん(南海ホークス)から渡辺清さん(阪急ブレーブス=所属球団はいずれも当時)に訂正された。

 近年、NPBはデータベースに1打席、1試合単位で記録を残し、投手の対戦打者別、打者のカウント別成績など詳細なデータも蓄積。これらを基に、チーム戦術や選手成績を統計学的に分析する「セイバーメトリクス」と呼ばれる手法も、メディアや研究者らの間で広がっている。

 NPBの沢目康弘次長は「野球はスコアから試合を細かく読み取れるスポーツ。公式記録を正確に残すことで、色々な切り口で分析できる」と話す。

 今月26日に日本シリーズが開幕する。過去の通算最高打率を調べると、200打数以上では長嶋茂雄さんの3割4分3厘、100打数以上は川上哲治さん(いずれも巨人)の3割6分5厘。こんな見方ができるのも、記録員の手で全試合の成績が網羅されているからである。

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