被団協のノーベル平和賞受賞決定「世界にとって意味ある」…被爆者や観光客から平和期待する声
読売新聞 / 2024年10月12日 15時0分
被爆地・広島、長崎では12日朝、被爆者らが核なき世界を訴える決意を新たにした。海外からの観光客らも、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)のノーベル平和賞の受賞が決まったことを機に、平和への思いが世界に広がることへの期待を口にした。
「活動続ける勇気もらった」
広島市の平和記念公園には、県被団協の理事長・佐久間邦彦さん(79)ら10人が訪れ、犠牲者に受賞決定を報告した。
佐久間さんは生後9か月の時に広島市の爆心地から3キロで被爆した。退職後に被爆体験を証言している。この日午前8時頃、佐久間さんは他の9人と原爆死没者慰霊碑の前に並び、「受賞を原爆で亡くなった皆さんと共に喜びたいと思って来た。次は核兵器が廃絶された時に報告に来るので、それまで安らかにお眠りください」と伝えた。その後、全員で数十秒間、黙とうし、目に涙を浮かべる人もいた。
佐久間さんは「被爆者は高齢化が進み、人数も減っているが、改めて活動を続ける勇気をもらった」と強調。被爆者運動を先導した坪井
原爆で父が犠牲になった県被団協事務局次長の古田光恵さん(77)は「ウクライナや中東の紛争地ではいつ核兵器が使われるか分からない。これからも核兵器禁止条約への参加を訴えていきたい」と話した。
フランスから観光で訪れたドゥニーズ・ジャン・ルイさん(60)は原爆ドームを見つめ、「各地で悲惨な戦争が行われている時代に、日本だけでなく世界にとっても意味のある受賞だ。広島の思いが世界に届くきっかけになる」と述べた。
母親のおなかの中で被爆した胎内被爆者で、広島平和記念資料館の元館長の畑口実さん(78)は「長年の苦労が実った」と被爆者たちの歩みをかみ締めた。
畑口さんは「同情されたくない」と長年、被爆者であることを隠してきたが、1997年に館長に就任したのを機に、自身が被爆者だと明かすようになった。母が見つけた父の遺品の懐中時計などを見せながら、証言活動を行ってきた。
「自分たちが最後の被爆者でありたい」。畑口さんはそう願っている。
「長崎を最後に」改めて決意
長崎市の平和公園では、平和祈念像の前で被爆者らの
九州を旅行中だった福島県喜多方市の会社員、大原一さん(60)は「昨日テレビで受賞が決まったことを知り、朝一番に訪れなければと思った。平和の泉に書かれた文字を見て、原爆で亡くなった人、苦しんだ人を想像した。自分が見て感じたことを周りにも伝えたい」と話した。
受賞決定を知った外国人観光客も被爆地に関心を寄せている。米国から長崎市を訪れていたアレックス・トラベンさん(34)は「国際情勢が緊張感を増し、さらに戦争を経験した人が減っていく中で、人々が恐ろしさを忘れゆくのは簡単なこと。後世に伝えていくためにも、被団協の受賞はふさわしい」と評価した。
被爆遺構などを案内する「平和案内人」として訪れた被爆者の田中安次郎さん(82)は「活動の先頭に立ってきた色んな先輩方の名前や顔が浮かんできて、賞をいただけるような活動をしてきたことを誇りに思う。これからも長崎を最後の被爆地にと訴えていきたい」と決意を新たにしていた。
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