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コールセンターのカスハラ対策に生成AI…苦情を分析して回答例表示、従業員の負担減らす

読売新聞 / 2024年10月12日 17時54分

NTTグループの生成AI「ツヅミ」を活用した顧客対応の実演(11日、東京都港区で)

 顧客の相談を受け付ける企業のコールセンターで、AI(人工知能)を活用する動きが広がっている。顧客から暴言や理不尽な要求を突きつけられる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が問題になる中、AIのサポートで従業員の負担を減らし、離職を防ぐ狙いがある。(上地洋実、木瀬武)

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 「インターネットの通信速度が遅い。電話に出るのも遅いし、ふざけるなよ」

 通信サービスへの苦情で男性が電話で怒声を上げると、コールセンターの女性は契約プランの変更を提案した。手元のパソコン画面では、男性の苦情を分析した生成AIが、代替プランの特徴や変更した場合のメリットを伝える回答例を示していた。女性が詳しく説明すると、男性は穏やかな口調に変わった。

 NTTグループが開発した生成AI「ツヅミ」を使ったコールセンターの実演だ。NTTコミュニケーションズが9~11日、東京都内で開いた企業向け展示会で披露した。会話内容に応じてAIが即時に回答例を示すほか、客の感情や言葉づかいを分析し、深刻なトラブルにつながらないような対応を促す機能もある。

 今年度中の商用化を目指しており、小島克重社長は「予想以上の反響がある。多くの企業が対応に困っているのだろう」と話す。

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 ソフト開発のインタラクティブソリューションズ(東京)は昨年、高圧的な顧客役を生成AIが演じるアプリの提供を始めた。普段の業務の音声データをAIに学習させると、業種に応じた訓練プログラムを作成する。保険や食品業界など約50社から引き合いがあるという。

 従業員は、アプリに話しかける形で激高した顧客への対応を練習する。AIがやり取りを5段階で評価し、「冷静で丁寧な対応を」などと改善点もアドバイスする。インタラクティブ社の関根潔社長は「練習を繰り返し、怒っている相手でも対応できると自信を持ってもらいたい」と語る。

 富士通もAIを相手にカスハラを疑似体験し、円滑な顧客対応に向けた練習ができるサービスの開発を進めている。応対中の従業員の心拍数や呼吸数を測定し、心理的ストレスなども把握できる仕組みで、2025年度中の提供を目指す。

   ■離職抑止も

 顧客の苦情を扱うコールセンターの従業員は、カスハラの被害に遭いやすい。パーソル総合研究所が今年2~3月に行った調査では、コールセンターを含む「顧客サービス・サポート」の仕事で3年以内にカスハラを経験した人の割合は30・7%で、福祉職(34・5%)に次いで多かった。

 暴言や脅迫といった被害が多く、「出勤が憂鬱ゆううつになった」との回答は42・8%、「仕事を辞めたいと思った」は36・6%に上った。コールセンターでは新人の定着率が低い傾向があり、AIの活用で離職を抑える効果も期待される。

 カスハラ問題に詳しい東洋大の桐生正幸教授は「顧客の不満は、企業側が誠実に聞くからこそ解消できる。しゃくし定規なAI対応では顧客の怒りは収まらない。最終的には人対人のコミュニケーションが重要になる」と指摘する。顧客に対応する企業側は、適切なAI活用が問われる。

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