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「唯一のザイロフォン奏者」通崎睦美…柔らかに木琴を歌わせる

読売新聞 / 2024年10月18日 17時0分

「木琴で『歌う』魅力をお客さんに伝えたい」(写真・中川忠明)

 世界でも珍しいプロの木琴奏者である通崎つうざき睦美(57)が、14日に東京・赤坂のサントリーホール・ブルーローズ(小ホール)でリサイタルを開いた。一時はほとんど忘れられていた楽器ザイロフォン(シロフォン)を復興させた立役者に、その音色の魅力について公演前にインタビューした。(松本良一)

 7月にアメリカ・ペンシルベニア州で開かれた音楽祭に招かれた際、「クラシック分野で世界唯一のザイロフォン奏者」と紹介された。「私が使っている楽器は米国で1935年に作られたもの。感慨深かった」と振り返る。

 マリンバからザイロフォンに転じたのは2005年。木琴奏者として戦前に米国で活躍した平岡養一(1907~81年)の「木琴協奏曲」を演奏したのが縁で、遺族からその愛器を譲り受けた。13年には平岡の足跡を追ったノンフィクション『木琴デイズ』(講談社)を書き上げ、サントリー学芸賞と吉田秀和賞を受賞した。「明るく歯切れの良い音色が好き。残響の長いマリンバと比べると演奏は難しいけれど、一つひとつの音が明確な質感をもって音楽を紡いでいくところが、自分の性分に合っている」

 モーツァルトやベートーベンの有名な旋律が軽快なトレモロで奏でられる時、打楽器とは思えない柔らかい響きが生まれる。「奏者の腕次第で楽器を存分に歌わせることができる。ポテンシャル(潜在能力)の高い楽器です」と語る。

 リサイタルでは「木琴でたのしむオペラの世界」と題し、ロッシーニやビゼーなどのオペラにちなんだ作品を中心に取り上げた。「クラシック初心者にも楽しんでもらえるプログラムで愛好者の裾野を広げたい」。それは昭和初期に平岡ら先達が木琴に託した夢でもある。

 木琴演奏の伝統を継承するといった使命感より、楽器を弾く喜びを純粋に追求したいという。願いは次代の若い奏者が世に現れること。「テクニックを磨き、自分なりのイメージを深めれば、おのずと音楽に味わいが出てきます」。第一人者の気負いはなく、どこまでも自然体だ。「歌う」木琴の世界はどこまで広がっていくだろうか。

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