1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

映画「アバター」で世界を驚かせたVP、いまや日常のニュース番組やドラマに浸透

読売新聞 / 2024年10月13日 5時0分

 3次元コンピューターグラフィックス(3DCG)などで作った映像を実写と合成する「バーチャルプロダクション(VP)」が、ニュース番組やドラマなどで広く使われるようになった。見たことのない映像を作れ、さらに経済的。テレビ局にとって、夢の技術となるだろうか。

実写と合成空間を演出

 テレビ東京のニュース番組「ワールドビジネスサテライト(WBS)」。CM中、副調整室のスタッフが手元のパソコンを操作すると、画面から一瞬で高層ビル群の夜景が消え、世界地図や市況の動きを示すモニターが浮かびあがった。

 スタジオに目を転じると、そこにあるのはキャスターの着くテーブルだけ。背後の壁や床一面には、緑色のシートが敷かれていた。殺風景だが、放送ではこの「グリーンバック」にCGの映像が合成される。

 WBSは番組の大部分が「VP」で制作され、出演者はモニターで合成後の映像を見ながら進行する。1時間の番組中、5、6回セットを変えることもあり、華やかな空間を演出できる。「今はユーチューブなどで誰でもニュースを配信できる。ダイナミックな仕掛けをしないと差別化が図れない」と尹浩然プロデューサーは話す。

 国内のテレビでは1990年頃から、CGを実写に合成する試みが始まった。天気図を映すなどしたが、平面的な画面で背景に使われる程度だった。

 2000年代に入り、3DCGの立体的な映像をグリーンバックに合成したり、LEDディスプレーに映したりする「VP」が広まる。現実には存在しない場面をリアルに表現できる。まずは映画で活用され、初めて本格導入された「アバター」(09年)は大ヒットした。

 ただ高度な技術が必要で、テレビでは導入が遅れた。その状況を変えたのが、技術の飛躍的な進歩だ。素材の制作が簡単で安価になり、カメラに搭載したセンサーで出演者の動きに合わせて映像を動かせるようになり、生放送にも対応できる。

 音楽番組やドラマなど、導入の範囲はどんどん広がっている。21年の東京五輪ではNHKが生放送で活用した。

 WBSでは、キャスターを宇宙空間に登場させたり、米大統領選のニュースの際には、ホワイトハウスの敷地内で候補者の前に立たせたりした。「没入感のある映像を提供でき、視聴者へのインパクトが上がった」と、出演する田中瞳アナウンサーは話す。

 テレ東は昨年11月、3DCG制作などを手がける「D・A・G」(東京)と資本業務提携を結んだ。来年4月までに、自社スタジオで制作する番組の6割にVPを導入する方針だ。

 導入が進む背景には、スタッフの働き方改革や制作の効率化、経費削減という狙いもある。

 一からセットを組むのに比べ、美術の費用は抑えられ、設置や撤去の負担も少ない。廃棄物や電力消費量を減らすこともできる。テレ東では美術費を約6割削減した番組があったほか、昨年のNHK大河ドラマ「どうする家康」では1週間平均で約20%、スタジオでの電力消費を削減した。スタジオを効率的に利用でき、WBSの放送を終えれば、朝の番組用に数秒で画面を切り替えることができる。

 没入感のある映像で、経済的で効率的。ただ現状ではCGの素材を作るのに少なくとも2、3日かかり、当日のニュースには間に合わない。設備を導入するコストも高い。「継続して使うには、システムを構築、運用する人材を育成しなければならない」とD・A・Gの二本松克巳COO(最高執行責任者)は課題を挙げた。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください