衆院選あす公示 難局を打開する政策論じ合え
読売新聞 / 2024年10月14日 5時0分
◆国の未来左右する選択の機会だ◆
国際情勢は激変し、内政の課題もまた山積している。難題への対応は待ったなしだ。
今回の衆院選は、日本の将来を左右する重要な機会である。安定政権が維持されるのか、あるいは野党が躍進して政局が流動化するのか、有権者の選択が焦点になる。
あすから始まる12日間の選挙で各党や候補者の政策、主張を吟味し、審判を下す必要がある。
◆国際情勢への対応急務
約3年ぶりとなる衆院選が、あす公示される。衆院定数465に対して、1300人超が立候補する見通しだ。
日本の名目国内総生産(GDP)は昨年、ドイツに抜かれ、世界4位となった。雇用や賃金など経済指標は改善傾向にあるものの、実感がわかない人は多いだろう。
人口減少に歯止めはかからず、年間の減少数は80万人を超えている。少子化対策は急務だが、政府の施策は給付に偏っている。
ウクライナ戦争や中東の紛争は長期化し、国際秩序は崩壊の危機にある。先進7か国(G7)の一角で、経済大国の日本はもっと外交力を発揮し、秩序の回復に貢献できるはずだ。
衆院選後には米大統領選も行われる。誰が大統領になったとしても、日米同盟を強化し、アジアの平和と安定を維持していかなければならない。そのためには日本の外交努力はもとより、防衛力の向上も不可欠だ。
政治を安定させ、様々な課題を克服していく体制を整えることが、日本の国力を維持していく上で死活的に重要だ。
だが、そうした現実を前に、与野党各党の政権公約からは、日本が岐路に立たされている、という危機感は感じられない。
自民党は経済政策で、物価上昇を上回る賃上げの実現を掲げたが、そのための具体策は、職務内容によって処遇を決める「ジョブ型」雇用や「リスキリング(学び直し)」の推進など、従来のスローガンの枠を出なかった。
成長戦略も、脱炭素やデジタル化への投資など、過去に何度も取り上げてきたテーマが並んだ。
政権発足から間もない短期決戦となったため、前内閣の方針を踏襲したようだが、これで経済を再生できると思っているのか。
◆成長戦略の新味乏しく
立憲民主党が掲げた経済政策も、「リスキリング、徹底した人への投資で賃上げを支援」や「グリーン、デジタルに重点投資」などで、新味に乏しい。
成長戦略をどう補い、企業の生産性を高めて賃上げを定着させていくのか。各党は選挙戦で具体策を競い合わねばならない。
立民は安全保障政策で、防衛力の強化に取り組むと明記する一方、「防衛増税は行わない」と強調した。また、沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事の中止も主張した。
防衛力の強化の必要性は認めながら、その財源の確保策に反対するのは無責任過ぎる。
普天間飛行場の名護市辺野古への移設中止は、民主党政権が掲げたが、その後、代替地が見つからずに移設を容認した経緯がある。当時の主張を今も繰り返していることにはあきれる。
今回の衆院選は、1票の格差を是正する観点から、小選挙区を「10増10減」して行われる。
投票価値の平等を重視する最高裁の判断を踏まえた見直しで、東京や神奈川など5都県で計10議席増やし、宮城や和歌山など10県で一つずつ、計10議席減らした。
定数の見直しを伴わない区割り変更を含めると、見直しは25都道府県の計140選挙区と過去最多に上る。今回の変更で、自分がどの選挙区に組み入れられたのか、戸惑う人は多いのではないか。
◆区割り見直しの影響は
投票価値の平等に固執し、地方で議員数が減り続ければ、地方の声は政治に反映されにくくなる。有権者が選んだ議員に国政を任せる、という代議制民主主義が揺らぎかねない。
1票の格差是正だけを基準にして、議員定数を決める今の制度は妥当なのか。各党は選挙戦で論じる必要がある。
小選挙区と比例選の重複立候補と、その結果生じる復活当選の見直しも重要なテーマだ。
自民党は、政治資金収支報告書に不記載のあった議員の重複立候補を認めなかった。だが、この問題は処罰の対象としてではなく、民意の公正な反映のあり方として検討し直すべき性格のものだ。
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