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JICA職員、入札参加企業に情報漏えいの疑い…ODAによるフィリピン鉄道改修事業

読売新聞 / 2024年10月14日 5時0分

フィリピン・マニラのMRT3号線

 政府開発援助(ODA)によるフィリピンの鉄道改修事業を巡り、国際協力機構(JICA)職員が、業務の見積額など秘密情報を東京都内の建設コンサルティング会社に漏えいした疑いのあることがわかった。業務は2019年に比政府が競争入札で発注し、同社が加わる共同企業体(JV)が落札した。JICAは就業規則に基づき職員を停職1か月の懲戒処分としたが、職員に秘密保持義務を課す国際協力機構法に抵触する恐れもある。

 ODAに関し、日本側の実施機関であるJICAの秘密情報の漏えい疑惑が明らかになるのは極めて異例。途上国のODAでは、JICAの見積額を踏まえて相手国が入札予定価格を設定することが多いとされ、漏えいにより入札が形骸化していた可能性もある。

 関係者や読売新聞が入手した資料によると、漏えいの疑いがあるのは、日本と約381億円の円借款(有償資金協力)契約を結び、比政府が発注したマニラ首都圏の都市鉄道「MRT3号線」改修事業のうち施工監理業務。比政府は、JICAが現地調査などで算出した見積額を基に入札予定価格を設定し、このコンサル会社など日本企業6社に入札への参加を案内したとされる。

 JICAで同業務を担当していた職員は18年5月頃、コンサル会社の社員に対し、JICAの見積額のほか、比政府側が作成した業務内容や要員計画などを複数回にわたりメールで漏えいした疑いがある。円借款契約は同年11月に締結され、19年6月の入札では、コンサル会社と別の1社などのJVが単独応札して約17億円で落札。残りの4社は入札に参加しなかった。

 この事業は同国の都市鉄道を再建するプロジェクトで、日本にとっても鉄道産業などインフラ(社会基盤)輸出の拡大を目指す政策の一環として重視されていた。職員には、入札不調などで事業が停滞する事態を回避するため、受注する企業を事前に確保しておく狙いがあったとみられるという。

 JICAは今年7月、「調達手続きに関する秘密情報を漏えいした」との理由で職員を処分したと発表する一方、円借款の相手国や対象事業などは現在まで明らかにしていない。コンサル会社は取材に「回答は差し控える」としている。

 ODA事業やコンプライアンスに詳しい北島純・社会構想大学院大学教授(政治過程論)の話「JICA職員が相手国政府の行う入札を骨抜きにしていた構図とも言え、悪質だ。情報開示に後ろ向きなJICAの姿勢は不適切で、漏えいの経緯など詳細を説明し、再発防止策を講じなければ、70年の歴史がある日本のODAに対する信用問題に発展しかねない」

 ◆JICA=外務省所管の独立行政法人で、ODA事業の日本側の実施機関。職員は「みなし公務員」とされ、国際協力機構法は職員に秘密保持義務を課しており、違反した場合の罰則は1年以下の懲役または30万円以下の罰金。

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