貴景勝引退でよみがえった「大親友でライバル」北天佑の記憶…元大関琴風の「演歌と土俵」
読売新聞 / 2024年10月16日 9時43分
元大関琴風の中山浩一さん(67)(元尾車親方、津市出身)は、9月の秋場所中に現役を引退した元大関貴景勝(湊川親方)について「土俵の上で(力士としての)死に場所を探していたのだろう」と語った。けがに苦しんだ貴景勝関の姿に、中山さんも大関を陥落し、39年前に引退決断を
連敗で休場…「やめるなら土俵の上で」
秋場所13日目の9月20日、中山さんは東京・両国の国技館近くにあるビルの一室で、報知新聞主催のトークショーに出演していた。5月に日本相撲協会を退職して以来、公の場で話すのは初めてだった。
その席で、貴景勝関について語り始めた。首や膝のけがが慢性化して思うように力が出ず、7月の名古屋場所で大関を陥落した。10勝を挙げれば特例で大関に復帰できる場所でもあったが、初日から2連敗で休場……。進退に注目が集まる中、貴景勝関は沈黙を保ち続けた。
中山さんは「2番とも貴景勝本来の相撲ではなかった。立ち合いで当たれなかった。当たれないから押せない。押せないから突き放せない……。(現役の続行は)厳しいと感じた」と話した。さらに「相撲をやめるなら、土俵の上で決める。こてんぱんにやられてやめた方がすっきりする。その一方で、このままではやめられないという葛藤もある」と、元大関の胸中を推し量った。
貴景勝貴信
たかけいしょう・たかのぶ 本名・佐藤貴信。1996年、兵庫県芦屋市生まれ、常盤山部屋。2019年3月場所後に大関昇進。優勝4度。引退会見では「横綱を目指し、手をいっぱい伸ばしたが、届かなかった」と語り、涙を見せた。
連勝記録を阻まれた因縁の相手
貴景勝関の妻、有希奈さんは、中山さんの大親友でライバルでもあった元大関北天佑(対戦成績は12勝12敗)の次女。北天佑は腎臓がんのため45歳の若さで他界した。有希奈さんと中山さんの長女が大の仲良しだったこともあり「自分の娘のように成長を見守ってきた」という。
中山さんにとって、北天佑は連勝記録を阻まれた因縁の相手でもある。2度目の優勝を飾った1983年初場所、琴風は初日に北天佑に敗れた翌日から翌場所7日目まで21連勝した。8日目に再び北天佑に負けた。有希奈さんには「『お前の父ちゃんにやられたんだ』なんて冗談も飛ばす」こともあるという。
有希奈さんの夫の貴景勝関に対しても「いつの間にか、有希奈と同様に大事に思うようになったし、自分の弟子のように心配もする」ようになった。引退については「静かに決断を待つだけだ」と話した。
トークショーがあった日の夜、「貴景勝引退」が発表された。
北天佑勝彦
ほくてんゆう・かつひこ 本名・千葉勝彦。1960年、北海道室蘭市生まれ。三保ヶ関部屋に所属し、「北海の白熊」と呼ばれた。83年5月場所後に22歳で大関昇進、優勝2度。2006年6月、45歳で死去。
「土俵のけがは土俵で治す」
トークショーでは「土俵のけがは土俵で治す」という相撲界の言葉も紹介し、聴衆の関心をひいた。
現代ではスポーツ医学が進歩し、力士も内視鏡手術など様々な治療を選択してリハビリに入る。問題は医師から完治を告げられたときだという。「医学的に完治したとしても入院中に稽古を休み、体から相撲が消えてしまった状態では相撲は取れない」と指摘した。
琴風は関脇、小結も経験していた1978年11月の九州場所で左膝の
手術と入院生活の末、4場所連続の休場で幕下にまで落ちた。だが、本場所には出られなくとも、師匠の佐渡ヶ嶽親方(元横綱琴桜)からは連日、「土俵に上がれ」「まわしを締めろ」と促された。痛みを押して稽古場に立ち、相撲勘が鈍らないよう努力を怠らなかったそうだ。
「土俵を離れることの怖さ」を知る師匠の親心が、再起と大関昇進への道を切り開いたといえる。当時は21歳。折れそうな心は故郷の祖母・ふみさん自作の短歌が奮い立たせてくれた。
琴の音よ 谷間の岩も貫きて 江戸かき鳴らせ 伊勢の神風
琴風豪規
ことかぜ・こうき 1957年、津市栄町生まれ。71年、元横綱琴桜(当時大関)に弟子入りし、同年7月、佐渡ヶ嶽部屋から初土俵。膝の大けがを乗り越え、81年9月場所後に大関昇進。優勝2度。尾車親方としては事業部長などを歴任。
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