すしざんまい社長が憧れたのは「パイロット」、「前例ない挑戦」で毎日過酷なトレーニングも…「極限状態なんでもできる」
読売新聞 / 2024年10月18日 10時0分
すしチェーン「すしざんまい」を全国に展開する「喜代村」社長の木村清さん(72)は中学卒業と同時に航空自衛隊に入隊。目指したのは大空を飛び回る戦闘機のパイロットだった。(読売中高生新聞編集室 鈴木経史)
極限状態になると…
「実を言うと、パイロットには幼い頃から憧れていたんです。父が交通事故で亡くなった3歳のとき、みんなが泣いているところにいたくなくて、葬式の最中に一人で外に出ました。そのとき、空を真っ赤なアメリカ軍の戦闘機『F86セイバー』が飛んでいくのを見たんです。そのかっこいい姿を見た瞬間から、パイロットになるのが夢になりました。
15歳の私が入隊したのは、埼玉県熊谷市にあった『航空自衛隊第4術科学校航空生徒隊』です。当時の教官はみんな第2次世界大戦の生き残りですから、訓練は厳しく、まず最初に腕立て伏せを1000回やるように言われました。同期100人のうち、1人でも脱落したら最初からやり直し。『絶対に無理!』と思いましたが、不思議なことに1か月もすると1000回できるようになるんですよね。『極限状態になるとなんでもできる。人間の力ってすごいな』と実感させられました」
3か月の訓練が終わる頃には、顔つきや体形もすっかり自衛官らしくなってきた。しかし、そこで衝撃の事実を知らされる。
「入隊したときには、当時、最新鋭だった戦闘機『F104』に乗れるという説明を受けました。それなのに、いつまでたっても操縦訓練は始まりません。おかしいと思って先輩に
パイロットになるには、高校を卒業して、航空機の操縦学生になる必要がありました。私たちはそうとも知らず必死に訓練を重ねていたのです。ショックで辞めようかと思いましたが、夏休みに実家に帰ると母や町中の人が大歓迎してくれて、とても言い出せる雰囲気ではありません。仕方なく部隊に戻り、一日も早くパイロット候補の資格を得るため、大検(大学入学資格検定=現在の高校卒業程度認定試験)を目指すことにしました。
訓練の合間を縫って猛勉強を続けた結果、17歳で大検に合格できました。いよいよパイロット候補になれると思ったのですが、『前例がないから1年待て』と、コンピューターを扱う部署に配属されました。それでもいつかパイロットになれると信じて、体力作りのために毎日朝晩10kmのランニングを欠かしませんでした」
夢を諦めて…
逆境をはねのけ、パイロットへの道を切り開こうとする木村さんだが、思いもよらない不幸に襲われる。
「自衛隊に入って4年目、三重県津市の部隊にいたときのことです。日課のランニングで山道を走っていた際に、すれ違ったトラックの荷台から積み荷が落ちてきて、頭を負傷してしまったのです。幸いケガは大したことなかったのですが、精密検査をしたところ、目のピント調節能力が落ちていることが判明しました。これは、ヘリコプターならともかく、戦闘機のパイロットとしては致命的なことです。子どもの頃から抱き続けた夢は、
自衛隊に残るという選択肢もありましたが、私は外の世界に出てみようと考え、5年9か月を過ごした自衛隊を退官しました。何もあてはありませんでしたが、パイロットに代わる夢を手探りで見つけようと思ったのです。
大検に受かった後、せっかく大学に行ける資格を得られたのだからと、中央大学法学部の通信教育課程に入学していました。中央大の法学部と言えば、法律の世界に多くの人材を輩出している名門です。『やるなら日本で一番難しい試験に挑戦してやろう』。そう思った私は、次なる夢を『司法試験合格』に定めて、猛勉強を始めたのです」
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